「インサイダー兼アウトサイダー」の視点で
組織の問題を斬る
――書評『サイロ・エフェクト』

1

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。第26回は、ファイナンシャル・タイムズ(FT)紙アメリカ版編集長ジリアン・テットによる『サイロ・エフェクト』を紹介する。

サイロの弊害がソニーのイノベーションの芽を摘んだ

 「サイロ」(silo)とは、もともと家畜の飼料や穀物などの貯蔵庫、あるいは弾道ミサイルの地下格納庫を指し、英語では「窓がなく周囲が見えない」との意味もあるそうだが、ビジネスの世界でサイロと言えば、組織が縦割り構造となって各業務部門の活動が連動を欠いている状況を指す。本書は、そうしたサイロの持つ危険性とそれを打ち破るヒントが企業や行政機関、非営利組織などのケースをもとに語られている。

 まず、サイロの弊害によりイノベーションの機会を逸し、衰退したケースとして取り上げられているのが日本のソニーだ。同社について語られている第2章は、ウォークマンの次世代製品として同じようなデジタル音楽デバイスをほぼ同時に3つも発表したエピソードから始まる。互いに競合する可能性があるのに、なぜ3つの製品が開発されたのか。著者のテットはこれをソニーのサイロの象徴と見る。1990年代、エレクトロニクス製品のみならず、さまざまな事業に多角化した同社が、その大規模化・複雑化の問題に対応するために事業部門を独立させ、カンパニー制を取った。

 これにより、各カンパニーの専門性は高まったかもしれないが、それぞれの縄張り意識は強まり、秘密主義が高まることで、3つの製品が世に出ることになってしまった。その後、この分野ではiPodが世界を席巻し、他方ソニーのウォークマンが凋落してしまったのは周知の通りである(なお、第6章では、こうしたソニーを他山の石として、サイロを排する努力を続けている企業の例にフェイスブックの取り組みが紹介されているが、日本の読者としては、少し複雑な気持ちになる)。

次のページ  文化人類学者としての視点»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
DHBRおススメ経営書」の最新記事 » Backnumber
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking