ずっと考えている。
だから考える時間をつくりません

ネスレ日本 代表取締役社長兼CEO・高岡浩三氏

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経営者の仕事のほとんどは、「考えること」と言っても過言ではない。その一方で、常に多忙で、時間に追われる。そんな経営者は、考える時間をいかに確保しているのか。今回のゲストは、ネスレ日本の高岡浩三氏。自然体で、考えるための特別なことは何もしないと言う。(構成/新田匡央、写真/鈴木愛子)

 

あえて考える時間を確保しなくても、
考える時間は日常に転がっている

編集長・岩佐(以下色文字):経営者は考えることに時間を費やさなければならないのに、忙しさのあまり、なかなか1人になる時間がありません。そんな状況のなかで、どのように考える時間を確保されているのか。それがこの連載のテーマです。

高岡(以下略):なるほど。でも、私は1人でいる時間をわざわざ作ろうとはしていないですね。クルマや飛行機での移動時間などは基本的に1人なので、考える時間がなくて困ったという思いをしたことは、これまで1度もありません。

朝から会議、ミーティング、顧客訪問などが続いても時間を確保できると。

 日ごろから、朝から晩まで膨大なスケジュールが詰まっています。経営者ですから当然のことです。でも、その間にも考える時間は十分にあります。そもそも、ほとんどの仕事は「作業」です。考えることは作業の1000倍ぐらい効率性が高いと思いますよ。ですから、考えるために長い時間を確保する必要があるという考え方そのものが理解できない。しかも、仕事の成果は密度で決まりますから、それほど遅くまで仕事はしません。何もなければ、午後6時から6時半には会社を出ます。仮にお客様との会食が入っていたとしても、11時、12時になることはあまりありません。8時半から9時、遅くとも10時には家かホテルに戻っています。それからは1人の時間です。時間は十分にあります。

たとえば、特定の時間を確保してじっくりと考えるということはないのですか。

 その問いについてお答えする前に、基本的な前提をお話しさせてください。日本人は問題解決能力を重視していますが、私はその前段階の「問題発見能力」が大事だと思っています。まずは、お客さんがどのような問題や課題を抱えているのか、それを見つけることに精力を注ぎます。お客さんの問題がわかれば、それをどのように解決しようかということがおのずと頭から離れなくなります。つまり、自分の頭の中に解決したい問題が常にあって、そのことについて常に考えているのですから、あえて考える時間を確保する必要はないのです。それを抜きにしても、考える時間は日常にあふれているじゃないですか。テレビでニュースを見ながらでも考えられますし、それこそトイレやお風呂に入っているときなどは、考えることにうってつけの時間です。

でも、考えるべきことは多岐にわたり、時間軸もさまざまです。今晩の会食で話す内容も考えなければなりませんし、来年のこと、5年後のことも考えなければなりません。

 もちろん、すべて考えます。頭の中でロールプレイすることが重要ですね。こんなことを言われたら、こんなことを話そうといった具合です。今日の取材も空港からここ(ネスレ日本東京コマーシャルオフィス)に来るまでの間にロールプレイは終わっています。編集長から何を聞かれても、困ることはありません。だって、言葉にもしなくていいし、文字に書き起こす必要もないんですよ。考えるだけであれば、ほんの数秒で思考が広がっていくと思いませんか。人間の能力は、そういう意味ですごいと思います。

常に考えていると、短期的なこと、中長期的なことが頭の中で混乱しませんか。

 自分のなかで問題を順序立てて、その順で解決していこうというスタンスはありませんね。その時々の気分で考えています。おそらく、自分のなかでのプライオリティが自然とでき上がっていて、日々出てくる問題によって状況が変化すると、それとともに少しずつプライオリティが変わっていくのだと思います。昨日イメージしていたプライオリティが今日も同じだとは限りません。

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