なぜ、従業員の給料を上げても
仕事への意欲が長続きしないのか

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幸福学の第一人者ショーン・エイカーが、「社員同士による表彰システム」の効果を示す。仕事で貢献・努力をした社員に対し、別の同僚が称賛の意を表して「ポイント」を送る行為をデジタルで制度化すれば、従業員と顧客の満足度向上につながるという。


 フォーチュン100に名を連ねる某企業の経営幹部が、私にこう言った。「会社に幸福促進プログラムは必要ない。社員が意欲を持つのは当然だ。そのために給料を払っているんだから」(この体験は拙著『幸福優位7つの法則』にも記している)。

 未熟なリーダーが非常によく口にするこの言葉は、給料=従業員エンゲージメント(意欲、愛社精神)という考えが前提となっている。ところが、仕事の満足度と給料の関係を考察したメタ分析によれば、両者にはわずかな相関しかないこと、そして高いパフォーマンスを引き出す要因は給料以外にもさまざまにあることが示されている(英語論文)。

 従業員の成功には「貢献への正当な評価」を受けること、そして「内発的動機」を持つことが重要だ。それは知られているのだが、これらをどうオペレーションにうまく組み込むかがカギとなる。

 私が携わっている2つの調査研究では、幸福度と仕事の成果を高めるためにデジタルプラットフォームを活用する効果について、解明が進んでいる。たとえば、ソーシャル・レコグニション(社員同士で称賛・表彰を与え合うこと)のプログラムである。

 かいつまんで説明すると、巧みに設計された「デジタル表彰システム」を活用することで、社員間での内発的な称え合いが広く行われるようになる。その費用対効果は高く、社員のパフォーマンスとエンゲージメントは著しく向上し、顧客ロイヤルティ(ネットプロモータースコア:仲間への推奨意図で測定)も向上する。

 この調査研究の構想は、2015年のワークヒューマン会議(WorkHuman)で生まれた。私とともに登壇したアダム・グラント(組織心理学者)、アリアナ・ハフィントン(ハフィントンポスト創設者)、ロブ・ロウ(俳優)は、それぞれ専門分野は異なるものの、共通のメッセージを持っていた。「前向きで意欲的な従業員を育てるには、効果的かつ拡張可能なソリューションを見つける必要がある」ということだ。

 私はある問いを胸に会議を後にし、1年がかりでその解明に取り組んできた。デジタル革命は、情報のスピードを速め、仕事量とストレスを増やしている。しかし、デジタルを幸福の促進に役立てることはできないものだろうか?

 まずは、「称賛」と「表彰」をオペレーションに落とし込んで業務成果につなげる方法を探った。その一環で、ソーシャル・レコグニション・プログラムの提供企業として有名なグローボフォース(Globoforce)との協働を開始。同社との提携企業から数社を選び、称賛・表彰と業務成果との相関に関する大量の匿名調査データを共有させてもらった。現在、調査研究の成果は実を結びつつあり、より優れた社内表彰プログラムの策定や既存のアプローチの検証が可能になろうとしている。

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