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国家戦略特区のアドバンテージを活かし
神奈川から未病産業、ロボット産業を創出

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キャスターから知事に転じた黒岩祐治氏は、スピード感のある行政運営と強固なリーダーシップで、神奈川県に変革をもたらした。就任一期目で3つの特区を取得し、「ヘルスケア・ニューフロンティア」政策の下、次世代産業の土台づくりに着手。二期目を迎え、その成果は続々と花開きつつある。全国自治体の首長として唯一、内閣官房ロボット革命実現会議の委員を務めるなど、ロボット産業の育成に腐心する同氏に、神奈川県の未来について伺った。

未病を治し、健康寿命を延ばすためにテクノロジーを活用

――「ヘルスケア・ニューフロンティア」政策を掲げ、「未病」と「ロボット」を軸とした新産業創出を推進されています。きっかけは何ですか。

黒岩 祐治(くろいわゆうじ)
神奈川県知事
1980年、早稲田大学政治経済学部卒業後、フジテレビジョン入社。『FNNスーパータイム』『報道2001』『新報道2001』などでキャスターを務める。2009年、同社を退社し、国際医療福祉大学大学院教授に着任。2011年4月、神奈川県知事に就任。2015年4月より同二期目を務める。全国地方自治体首長として唯一、内閣官房健康・医療戦略参与、同ロボット革命実現会議委員(現在は、同会議を継承した「ロボット革命イニシアティブ協議会」参与)に就任。

 神奈川県知事になって、圧倒的な勢いで進む超高齢社会の問題に直面し、これをどう乗り越えるかが最大の課題だと考えました。1970年にはきれいなピラミッドを描いていた神奈川県の人口構造が、2050年には正反対になってしまう。従来の社会システムのままだと、とても持ちこたえられないことははっきりしています。持続可能な社会システムをつくるには、病気を治しているだけでは間に合わない。そこで、「未病」から治して、健康寿命を延ばしていこうというのが目的です。

 未病とは、健康状態を健康か病気かで明確に分けるのではなくて、両者の間の連続的な変化の状態を表す考え方です。病気になってからではなく、未病から治していくためには、日常生活のなかで自分の未病状態を知り、改善していくことが求められます。そのなかであらゆるテクノロジーが大きな力となり、ロボットもその一つというわけです。

 ロボットというと、ヒト型ロボットをイメージしがちですが、我々はセンサーで感知し、判断して、アクションするものをロボットと呼んでいます。たとえば、県が未病ブランドの製品・サービスとして認定した「MIMOSYS(ミモシス)」は、スマートフォンの通話から声を分析し、情動やストレス、抑うつ状態を測るアプリですが、こうしたものも幅広い概念でロボットといえます。

――「さがみロボット産業特区」を取得し、ロボット技術の実用化・産業化に向けた研究開発も進んでいるようですね。

 もともとは昨年開通した、さがみ縦貫道路(圏央道の一部)の周辺地域を活性化したいという狙いがありました。周辺地域の相模原、厚木、藤沢などには、キラリと光る技術を持った中小企業がいっぱいあります。企業や大学の研究所、JAXA(相模原キャンパス)もある。これらの力を一つに束ねながら新しいものを生み出すことができないかと考えたときに思いついたのがロボット産業だったのです。

 ロボットの研究開発には、実験室で基礎的な研究を積み上げていく部分と、製品化を進める2つのステージがありますが、我々が焦点を当てたのは後者の出口戦略です。そのためには規制緩和が不可欠です。さまざまな規制や制度の特例措置が受けられる特区をつくることで、実証実験を促し、スピーディな製品化が期待できると考えました。参加企業のニーズをくみ取り、プレ実証実験フィールドもつくりました。これは、廃校になった県立高校の校舎を丸ごと提供したものですが、あるメーカーに利用していただいたところ、試作品を1年間で製品化し、すでに販売しているという事例も出てきています。

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