ビッグデータを通して「人間とは何か」に迫る
――書評『カルチャロミクス』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第25回は、「グーグル・Nグラム・ビューワー」の開発者であるエレツ・エイデンとジャン=バティースト・ミシェルによる『カルチャロミクス』を紹介する。

ビッグデータの裏に
人間の存在を感じる

 何気なく手に取った作品に、ここまで没頭するとは想像していなかった。

 著者のエレツ・エイデンとジャン=バティースト・ミシェルは、「グーグル・Nグラム・ビューワー」の開発者だ。これは、過去数百万冊に使用された単語やフレーズの頻度をグラフ化することができるシステムである。たとえば、「japan」と入力してグラフを眺めると、歴史の転換を迎えた時期に登場回数が跳ね上がっている様子がわかる。もし時間が許せば、実際に使ってみることをおススメしたい。

 英語の活用形の変化というベーシックな分析から、著名人の栄枯盛衰、政治弾圧の実態、記憶と忘却の現実など、さまざまな視点から世界をとらえ、かつ、確実な根拠に基づいて丁寧にそれをひも解いていく。その展開にはまったく飽きがこない。世界中の書籍をスキャンするうえでいかに著作権のハードルを乗り越えたのかなど、その開発秘話にも読み応えがある。

 どの章を読んでもその筆力には驚かされるが、なかでも、ナチスドイツによる弾圧を描いた第5章には圧倒された。

「グーグル・Nグラム・ビューワー」で示されるグラフに加えて、歴史への深い造詣に基づく緻密な描写は、陰鬱とした当時の空気まで伝わってくるようだった。また、時代の大きな流れに乗ろうとした人や、それに翻弄されながらも抗おうとする人の存在も感じさせた。単語やフレーズの登場回数を示す無機質なデータの裏に、人間の感情がむき出しになる瞬間すら想起させたのである。

 本書を通して、ビッグデータの可能性のみならず、「言葉」というレンズを通して「人間とは何か」を考えずにはいられない。ジャレド・ダイアモンドの名著『銃・病原菌・鉄』を彷彿とさせる、非常に刺激的な一冊である。

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