Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

「部分最適」から「全体最適」の世界へ
ディープラーニングでビジネスのルールが変わる

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テクノロジーの活用によりファッション業界の未来を創出する「DECODED FASHION」が昨年、初めて日本でも開催された。セッションの一つ、「三越伊勢丹スタートアップ・コンペティション」では、世界の先端企業数十社がインストア・エンゲージメントを高めるためのアイデアを競い合い、見事、ブロンズアワードを受賞したのがテクノロジー・ベンチャー、株式会社ABEJA(アベジャ)である。自社開発したディープラーニングを武器に小売りをはじめ幅広い業界にソリューションを提供している。代表取締役CEOの岡田陽介氏に、人工知能の可能性について伺った。

買い物客の入店から購入までの行動を見える化

――「DECODED FASHION TOKYO SUMMIT 2015」で提案されたソリューションとは、いったいどのようなものですか。

岡田 陽介(おかだようすけ)
株式会社ABEJA 代表取締役CEO
1988年生まれ。小学5年生からプログラミングをスタートし、高校でコンピューター・グラフィックスを専攻。文部科学大臣賞を受賞。大学では、3次元コンピューター・グラフィックス関連の研究、商店街活性化プロジェクトなどを経験。2011年、株式会社響取締役CIOに就任。ウェブサービス開発を担当。その後、株式会社リッチメディアに入社、6カ月で最速最年少事業本部マネージャーに。2012年4月に同社を退社し、同年9月に起業。

 三越伊勢丹さんに限らず、シニアマーケットやインバウンドマーケットへの対応、オムニチャネル施策の促進といった小売業界の共通課題に対し、人工知能技術のアプローチの一つであるディープラーニング技術や映像解析技術を活用したソリューションを提案しました。具体的には、弊社の提供するクラウドサービス「ABEJA Platform」内のデータ取得機能である年齢性別推定システム「ABEJA Demographic」や顧客の動態滞在状況のヒートマップ化システム「ABEJA Behavior」などを用いた、シニア層・外国人層の識別や客観的データに基づいたマーケティング施策です。いずれも小売業だけでなく、製造業など多様な業界に広く応用できるシステムです。

――システム導入によって、何ができるようになるのですか。

 小売業を例にとると、どんなお客様が何人くらい入ってきたのかを把握していなければ、客観的な判断に基づいたマーケティングはできません。にもかかわらず、大半の店舗では来店者人数や来店者の年齢性別の属性、動線といった来店した人のデータを取得することや、それらを売上げや人員シフトのデータと結びつけて活用することができていません。つまり、何がきっかけで商品が売れたのかを、客観的に判断する手段がないわけです。ですから、買わなかった来店者のデータも含めて可視化して、売上げをはじめとした既存のデータとの相関性を分析することで、PDCAサイクルを回していきましょうというのが、私たちの提案です。

――システムは実際に三越伊勢丹に導入され、実証実験が行われているそうですが、 どのレベルまでのデータを取得・分析しているのですか。

 POSデータ、ソーシャルデータ、気温、店舗周辺や店舗内でのつぶやき、さらにERPなどにもつながっています。また、通路やラック前、各棚に至るまでセンサーでチェックしています。お客様がどのように入店し、さらにどのように店舗内を歩き、どのように棚に近づいて、購入しているのか、あるいは購入をやめたのかといった一連の行動が分析できるわけです。

 すると、実際に売れる商品と売れない商品、まったくだれも寄りつかない棚、実際に購入することになった要因などを、明らかにすることができます。こうしたデータがあれば、「利益率を上げたい」「顧客満足度を向上したい」といった、具体的なファクターに合わせて店舗運営の手法を最適化していくことも容易です。

 これまでのマーケティングは、買った人を対象にしたマーケティングが中心でした。これからのモノが売れない時代には、買わない人のマーケティングをして、「なぜ、買わないのか」を明らかにしていくことが必要不可欠でしょう。

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