上司のちょっとした振る舞いが
部下の「率直さ」を左右する

部下からの率直な意見・提案を妨げる一因として、上司が無意識のうちに発する「非言語の威圧感」があるという。視線や振る舞いや環境が、相手を威圧していないか振り返ってみよう。


 パワーポーズ(力強さや自信を表すポーズ)に関する研究によれば、姿勢、表情、声を意識的に変えることで、自分のアイデアや意見をより表現しやすくなり、相手に対する影響力を高めることができる(英語論文。共同研究者の1人エイミー・カディのTED動画)。これは立場や肩書に関係なく当てはまる。たとえば、自分は現在の職位よりも2階級ほど上だという「つもり」で振る舞うだけで、相手の反応には敬意が表れるのだ。多くの場合、相手はその変化をはっきり自覚していない。しかしこの効果は、公式・非公式を問わずいかなる種類のヒエラルキーにおいても作用する。

 そして、無意識に発せられるパワーシグナルにも同じような効果がある。我々は15年間にわたり、上司に対する部下のコミュニケーションの「率直さ」を左右する要因について研究してきた。その過程で次の現象が非常に多く見られた。リーダーのほうが無意識に「自分がボスだ」というシグナルを送り、それが部下からのアイデア提案を妨げているのだ。多くのリーダーは、部下からの率直な提案を望んでいる。喜んでフィードバックを与えようという姿勢を示すことに苦心する人もいる。だが上司という立場から漂う威圧感のせいで、せっかくの意図が台無しになっている。

 しかし、望みがないわけではない。パワーシグナルに対する意識を高め、わずかな調整を加えれば、周囲の人々が近づきやすくなるのだ。

 我々は、人が不安を感じやすい医療現場でこの原理がどう作用するか確かめようと考えた。まず実際の診療室を借り、「患者」と「医師」の写真を3枚撮った(実はどちらも俳優で、医師役は白衣と聴診器を身につけている)。1枚目の写真では、両者とも同じ高さで座り、よくある医師と患者の会話をしている。2枚目では、医師の椅子が約30センチ高くなっており、患者を見下ろしている。そして3枚目では、患者が診察台の上に身を起こして、医師を見下ろす姿勢になっている。

 他の条件はすべて同じとする。そして実験の参加者それぞれに、無作為に選んだ写真1枚を見せて、患者の立場になって次のような場面を想像してもらう。「あなたは胃腸の不良で来院している。医師は通り一遍の素っ気ない診察をした後、何も異常はありません、気のせいですよと言って診察を終えようとしている。しかしあなたはまだ、自分の胃腸は絶対にどこかおかしいと感じている」

 参加者にはその後、「この医師に自分の意見を率直に話すことをどう感じるか」という質問に答えてもらった。すると、患者の目の高さが医師と同じ(図1)か、より高い場合(図3)には、ある程度の威圧感を感じるという答えが多かった。しかし医師の椅子のほうが高い場合(図2)では、威圧感の度合いは明らかに強く、7段階のスケールで1ポイント近く高かった。

 パワーシグナルはもちろん、立ち方や座り方だけに留まらない。上司が部下を話しやすくさせるためには、腕を組まずに体の横に置く、声を穏やかにする、よりカジュアルな服装をする、あるいは単に微笑むといった振る舞いも有効だ。ランチで皆と同じテーブルに着く、会議で最初から自分の意見を表明するのを控える、などのシグナルにも同じ効果がある。

 物理的な環境も大事だ。州の社会福祉関連機関に勤めるあるマネジャーが初めに与えられたオフィスは、暗い色の壁と重々しい木製の家具を備えた部屋だった。部下と打ち合わせをする場所としては、冷たくて少し威圧的な印象を与えると気づいた彼女は、すぐに壁の色を変え、小さな丸いテーブルを置いた。すると部下は以前によりも頻繁にオフィスにやって来て、簡単な確認をしたり、改善のためのアイデアを伝えたりするようになった。

 時にはオフィスから外に出るのも、部下の緊張をほぐし、信頼を築き、率直な会話をするよい方法となる。ある信用金庫のトップは毎月、少数の従業員との昼食会を地元のあちこちのレストランで開いている。社外での機会を通じて、部下をよく知り職場での経験を聞き出しているのだ。

 また、フォーチュン500に名を連ねるある保険会社では、上級幹部たちが金曜の午後にコールセンターを訪れ、2~5階層も下の従業員とクッキーをお共にざっくばらんに語らう会を開く。電話が最も少ない時間帯を利用するため、オペレーターたちにその週に受けた電話に関する意見や問題点を話してもらう格好の機会となる。彼ら自身の職場で話すのだから、口も開きやすい。

 以上、さまざまな例が示すように、小さなパワーシグナルには大きなメッセージを伝える力がある。したがって周囲の率直な意見表明を促すには、パワーシグナルを注意して使う必要がある。そうすれば部下から優れたアイデアが寄せられるだけでなく、意欲と忠誠心も当然高まるはずだ。


HBR.ORG原文:Nonverbal Cues Get Employees to Open Up—or Shut Down December 11, 2015

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ジェームズ・R・ディタート(James R. Detert)
コーネル大学サミュエル・カーティス・ジョンソン経営大学院教授。経営学を担当。

 

イーサン・R・バリス(Ethan R. Burris)
テキサス大学オースティン校マコームズ・スクール・オブ・ビジネス准教授。経営学を担当。

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