人々の注目を制する者が市場を制す
――書評『アテンション』

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。第22回は、シリコンバレーのベンチャーキャピタルDominateFundの共同経営者のベン・パーによる『アテンション』を紹介する。

 

情報過多時代において「注目」は希少資源

「これからは、アテンション(=人々の注目)」を制す者が、夢も市場も手に入れる」「シリコンバレー発 2016年最重要キーワード!」というキャッチコピーに釣られて本書を手に取り、「なぜアマゾンでついポチッてしまうのか」「政治家と『効き目』のあることば」「カジノはこうして客の財布を開かせる」……と興味深い見出しが続く目次を見て、少し立ち読みし、レジに向かった。続々と発行され、書店の棚にごまんと並ぶ経営書の中で、なぜ本書を買ったのか──読んでみて、買う気にさせるノウハウに合点がいった。

 著者はベンチャーキャピタリスト。出資を求めて売り込みに来る多くの起業家の話を聞き、将来性を見極め、事業が軌道に乗るように支援する。その経験から、「注目」が事業の成否を決める鍵であることを実感する。インターネット経由などで毎時、無数の情報供給を受ける現状では、人々の「注目」は希少資源であり、無視されず忘れられずにそれを獲得することが重要なのだ。

 人々の注目を制する方法、具体的には、販促キャンペーンの計画を立て、口コミで販路を広げ、効率よく顧客を獲得するなどの施策を著者は磨いてきた。その前提となる「注目が働く仕組み」を解き明かしたのが本書である。

 著者はまず注目を、即時、短期、長期の3種に分類し、それぞれの構造を明かす。その上で、この3種の注目を獲得するためのツール(トリガーとか戦略と表現する)の7つ(自動、フレーミング、破壊、評判、ミステリー、承認)について詳述する。

 例えば、「自動トリガー」は、感覚的刺激を与えて注目させる方法である。色や音などで、人間の本能に働きかける。アマゾンのウェブサイトでは、「カートに入れる」のボタンは黄色で、「1clickで今すぐ買う」のボタンはオレンジ色であるが、この色である理由として心理学での研究成果が解説される。

「フレーミング・トリガー」の項では、議題設定の意義を説く。これは、人々の頭のなかにある特定の話題の重要性を自分に都合の良い方向に変えることだ。例えば、世論調査を基に、米国共和党の議員は、連邦政府を批判する際には「政府」ではなく「ワシントン」という単語を使うべきだと専門家に推奨される。人々はワシントンを嫌う一方で、地方政府のことは好きであるためだ。2つの言葉を使い分けることで、聞き手が受け取るイメージが違ってくるのだ。「大事なのは、あなたが何を言うかではなく、人々が何を聞くか」という。

個人にとっても重要な「注目」の獲得法

 このように学問上の研究成果や調査を基に、効果的な「注目」の獲得法を説いていく。何かの成果(本書では「注目」の獲得)を得るための方法を、科学的に探究したり実証したりするのは、いかにも米国のマネジメント手法という感じで、読者によっては好き嫌いがあるかもしれないが、事例の多くが面白く、信ぴょう性がありそうなので、読者は一気に読まされてしまうだろう。

「注目」を制することが重要なのは、ビジネスだけでなく、個人の生活においても当てはまる。社員が自分の意見を会議で通す上でも、教師が生徒に授業を施す際にも、あるいは、憧れの異性のハートをライバルと争う場合でも、「注目」を制することは重要であり、本書で解説する方法は応用可能である。「ワイアード・ジャパン」を創刊したインフォバーンの代表である小林弘人氏が本書巻末に書いている日本語版解説は、概要を理解するのにとても役に立つ。

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