ビジネスと倫理の両立に奮闘する人々
――書評『理想主義者として働く』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。第21回は、BPでCSRに関わった経験を持ち、現在はコロンビア大学で教鞭を執るクリスティーン・ベイダーによる『理想主義者として働く』を紹介する。

 

現代の企業活動にCSRは欠かせない

 企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展するための活動であるCSR。これには納税や法令順守といった当たり前のことから、安心・安全な商品やサービスの提供、人権の尊重、公正な事業活動の推進、コーポレートガバナンスの向上、環境への配慮、サプライチェーンや地域課題への対応などが含まれる。今日の企業――特にグローバル企業――にとって、こうしたCSRへの取り組みはもはや不可欠のものと言えるのではないだろうか。

 本書の著者、クリスティーン・ベイダーは石油メジャーのBPでCSRに携わった経験を持つ。同社に入社するきっかけとなったのは、イェール大学ビジネススクール時代に聴いたBPのCEOジョン・ブラウンの講演であった。以前から「ビジネスと社会」の問題に興味を持っていたベイダーは、「企業はビジネスを展開する地域の社会から切り離された存在ではあってはならない」と語るブラウンに魅せられ、BPに「恋して」しまったのだ。

 入社後まもない2000年8月に、ベイダーはインドネシアのパプア州に赴任する。BPはこの地で液化天然ガスのプラント建設を計画しており、建設予定地に住む住民を移転させる必要があったほか、大気汚染の問題などへの対応があり、ベイダーは人権インパクトの評価を担当することになったのだ。インドネシアの次には、中国との合弁企業において地域社会との関係づくりや労働環境の整備を進め、アジアで3年の時を過ごした後、ロンドンの本社では、(BP本流の業務である売上管理や財務分析に携わるべきではないかと思いつつも)BPの事業における人権の課題を追求する業務に就く。そしてさまざまな事情から、10年間勤務したBPを離れ、その後は国連のビジネスと人権に関わるプロジェクトに参加、「指導原則」策定に携わった。

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