創造的リーダーが
組織を動かすためにやっている3つのこと

組織に創造性を育み革新へと導くために、リーダーは何ができるのか。IDEO(アイディオ)で長年、最も優れたデザインとイノベーションに携わってきたトム・ケリーが、創造的リーダーに共通する3つの方法論と具体例を示す。


 私はIDEOでの30年間を通して、世界で最も革新的な企業のいくつかと協働する機会に恵まれ、何人もの創造的なリーダーたちの仕事ぶりに接してきた。そのなかでも特に優れたリーダーは、いかにして周囲に創造性を育んでいるのか。この点を注視してきた私が気づいたのは、以下の3つの方法だ。

1.創造的なリーダーは、熱心なファンのコミュニティを組織の内外にまたがって構築する

 ドローンを製造する3DロボティクスのCEO、クリス・アンダーソンは、初めて従業員を雇うはるか以前から、自分のウェブサイト「DIYDrones」を通じてドローン愛好家たちのノウハウと知見を集めてきた。以来、オープンソースによるイノベーションを続けている。同社は創造的なコミュニティを育て、あらゆるレベルでの参加を歓迎している。極めて単純な情報を提供しただけの貢献者にもTシャツを贈り、3Dロボティクスの「インサイダー」として仲間に迎え入れたことを示すのだ。

 より積極的に関与を強める世界各地の優秀な参加者には、飛行機のチケットを贈り、本社に招待してリーダーたちが直接顔を合わせる。そこからフルタイムの従業員になった人もいる。従業員、パートナー、協働者たちが、クリエイティブな貢献を通じて社会関係資本を獲得していく。その自由で活発な交流が、同社の成長につながっているのである。3Dロボティクスは現在、コンシューマ用および商用のドローンで米国第1位の生産台数を誇る。

2.創造的なリーダーは、小さな実験を積み重ねることで大きな変化を実現する

 何年も前のこと、スチールケース(IDEOの長年の戦略パートナーでもある家具メーカー)で当時CEOを務めていたジム・ハケットは、経営陣の面々に個室からオープンスペースのオフィスへと移ってほしいと考えた。その当時、多くの企業では個室を持つことが幹部の特権と見なされていた(現在でもそういう企業は少なくない)。しかし、システム家具の世界的リーダーであったスチールケースとしては、マネジャーたちみずからが、伝統に囚われず新しいレイアウトのオフィスで働く価値を体現すべきだ――ハケットはそう考えたのである。

 ただし、古きを一掃して新しきを導入せよ、という鶴の一声だけでは、多くの幹部から反発を招き、免除を請われるであろうこともわかっていた。

 そこで、経営陣にちょっとした実験を提案することにした。オープンスペースの空間に「リーダーシップコミュニティ」と名付けた試験的なオフィスをつくり、6ヵ月間だけそこに参加してくれるよう頼んだのである。限られた期間、自社の最新鋭の製品を取り入れた新しい環境を真剣に試してもらう――それだけを望み、6ヵ月後に何か不都合があれば必ず対処すると約束した。

 尊敬するリーダーから「ちょっとだけ試してほしい」と言われたら、断るのはおろか、不平をこぼすことすら難しいものだ。そして事実、誰も反対しなかった。かくしてスチールケースでの6ヵ月の実験は、そのまま20年間続くことになる。個室に戻る幹部は1人としていなかった。

3.創造的なリーダーは、ストーリーを語ることでイノベーションに弾みをつける

 マーケティングに携わる人々は、新しい製品やサービス、ブランドを成功させるうえで、巧みなメッセージングが大きな役割を果たすことを熟知している。そしていま、創造性に富むリーダーたちは、アイデアを選別する最初の時点から、顧客に喜んでもらえるかだけでなく「魅力的なストーリーを伝えられるか」という可能性を重視している。

 化粧品のスタートアップ企業、ジュレップ(Julep)CEOのジェーン・パークは、マニキュアを革新するためにIDEOと協働した。そして、「達人(mavens)」と呼ばれる同社製品のコアユーザーたちの間で話題になるようなブレークスルーを目指した。

 デザインを研究するなかで、長年認識されてはいたが完全に解決されていなかった問題に焦点が当てられた。それは利き手でないほうの手にブラシを持ってマニキュアを塗るのが、難しいということだ。パークとそのチームは、正確さが求められる器具――鉛筆や絵筆、外科用のメスなど――にはどれも、ある程度の長さがあることに気づいた。そこで、取り外し可能な長い「持ち手」を開発。プリエ(Plie)と名付けられたこの持ち手をブラシに付ければ、よりスムーズで正確な仕上げができる。また、マニキュアのキャップにマグネットで装着できるという工夫もした。

 このクリエイティブな解決法は、それ自体価値があったが、他のさまざまな器具(野菜を洗うブラシ、ペン型インスリン注射器、ハンマー等)から着想を得たというプリエの開発ストーリーによって、人気を得るために必要な話題性が生まれた。ジュレップ社内のチームと市場にいる関係者、両方の心を掴むうえで役立ったのである。

 素晴らしいストーリーと熱心なファンのコミュニティという組み合わせに目を向けた『フォーブス』誌は、同社が間もなく「10億ドル規模の化粧品ブランド」になるかもしれないと最近報じた(訳注:プリエの発売資金はクラウドファンディングにかけられ、6200人のファンによって、24時間以内に目標金額を大幅に上回った)。

 創造性豊かなリーダーが、成功に向けて仲間や組織の背中を押す方法は、もちろん他にもたくさんある。しかし、コミュニティの構築、実験、そしてストーリーテリングは、特に有効な3大手段である。


HBR.ORG原文:3 Things the Most Creative Leaders Do December 10, 2015

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トム・ケリー(Tom Kelley)
IDEOのパートナー。カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスおよび東京大学iスクールのエグゼクティブ・フェロー。デイビッド・ケリーとの共著にCreative Confidence(邦訳『クリエイティブ・マインドセット』日経BP社、2014年)がある。
 

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