営業成績トップなのに、降格を命じられました

『好きなようにしてください』第2回

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優秀な成績を収めていたにもかかわらず、降格を命じられた――。会社にとって不要な人間なのかと悩む相談者に、楠木氏が示す「営業は総合芸術」の真意とは。書籍『好きなようにしてください』の一部を紹介する連載、第2回。
 

営業成績トップなのに、降格を命じられました
不動産販売会社勤務(33歳・女性)
 大学卒業以来、いまの会社に入社し、不動産のセールスとしてずっと最高査定に近い成績を死守してきました。おかげで31歳で課長に昇進することができました。私生活も順調で、32歳の時に結婚。すぐに子どもができて1年間育休を取り今年復帰しました。
 私としては、もちろん営業課長として復帰する気満々だったのですが、ふたを開けてみればまさかの降格。課長職も解かれ、3段階もの降格です。
 しかも部署は営業推進部です。要は前線には出してもらえず、営業マーケの支援をしていろと言うことです。時短も利用せず、しっかりフルで復帰したのにこの冷遇。
 私はもう会社にとって不要な人間なのでしょうか?

 

「ポンコツ上司」の疑いが濃厚

 まったく心配ございません。あなたが「会社にとって不要な人間」だなんて、とんでもない。むしろその逆、あなたこそ会社が必要としている人材です。

 まず、重要な事実として、あなたは「不動産のセールスとしてずっと最高査定に近い成績を死守してきた」。これがすべてです。このカードだけで十分。まずは上司に時間をとってもらい、「なぜ営業マーケの支援をしろと言うのか」「3段階の降格になるのか」について膝を突き合わせて説明させましょう。

 人事や評価の問題はお互いに「あうんの呼吸で納得」になりがちですが、デリケートな問題だからこそ、上司と部下が一対一で、直接顔を突き合わせて話すべきだと僕は思います。

 上司と話し合った結果、いまよりも会社の意図がよくわかり、自分なりに「課長職も解かれ、3段階もの降格」の理由が納得できれば、とりあえず働き続けたほうがいい。ただそこで、まともに話に応じないとか、話を聞いても木で鼻をくくったような対応だったら、即座に転職したほうがいいと思います。

 実力のあるあなたであれば、この会社を離れても就職先はいくらでもあるでしょう。何の心配もありません。ただし、いきなり頭にきて辞めるのではなくて、まずはよく説明させるのが先決です。なぜかというと、あなたのこの要求にどう応えるか、それが上司なり会社のリトマス試験として有効だからです。

 配置転換や降格は上司(もしくはそのまた上司)の権限に基づく意思決定です。これは遊びではなく仕事の話。上司は自分の決定について説明責任を負うのは自明の理。あなたよりも、むしろ上司のほうが試されている局面です。そのぐらいの強い気持ちでことに臨むべきです。

 実際のところはよくわかりませんが、ご相談の文面から推測すると、どうもこの上司は相当にポンコツだという疑いが濃厚です。あなたの実績と能力は周知の事実。にもかかわらず育休明けにこういう処遇をするということは、あなたのような家庭を持って子どもを育てながら仕事をする管理職の女性をうまく扱えないというのが主たる理由なのではないでしょうか。だとすると、あなたの一件でポンコツ上司が馬脚を現したということに他なりません。

 もっと言えば、あなたの会社のマネジメントそのものが働く女性にとってポンコツなのかもしれません。あなたからすれば大いに不愉快でしょうが、あなたのキャリアはこれからも長く続きます。33歳というまだ早い時点で、働く女性にとっての会社のポンコツぶりが明らかになったということは、このままズルズルいった先で露呈するよりも、ラッキーだったとも言えます。僕の推測が当たっていれば、この際、これ幸いと転職を考えたほうがよいと思います。

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