「好きなようにする」ことは、タフで厳しい

『好きなようにしてください』著者インタビュー

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「大企業とスタートアップで迷っています」「30代でいまだに仕事の適性がわかりません」「キャリア計画がない私はダメ人間ですか?」――。50個のキャリア相談について、楠木建氏が時に鋭く、ユ―モアを交えながら仕事論を展開する『好きなようにしてください』。若手ビジネスパーソンを中心に好評を博している本書について、著者の楠木氏に話を伺った(本インタビューは2016年の刊行当時に掲載したものです)。

自分の仕事の哲学は何か

――本書はNewsPicksでの連載「楠木教授のキャリア相談」をベースにしています。まず、この連載は好評でしたね。

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楠木建(くすのき・けん)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。
1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。 著書に『ストーリーとしての競争戦略』『「好き嫌い」と経営』(ともに東洋経済新報社)、 『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある。

楠木(以下略):けれども、実は連載を始めてすぐに後悔しました。やめておけばよかったなって(笑)。仕事やキャリアは人それぞれ。相談者が今こういう仕事で、こういう問題を抱えていて……というのは、優れて個人的な問題です。人によって好き嫌い、得手不得手は異なるし、簡単に良い悪いで片づけられる問題でもない。しかも、送られてくる相談文はごく短く、あっさりしたものが多い。想像の上に推測を重ねなければ回答のしようがないのです。結局のところ、「好きなようにしてください」としか言いようがない(笑)

――それでも、1年間、50個もの相談に答えてこられました(笑)

 実は、5回くらい終えたところで、どうも気乗りがしないので、そろそろやめさせてくださいと言おうと思っていたんです。「この仕事、好きなようにしてください、としか言いようがないんですよね。あとは相談相手に関係なく、自分の仕事論を繰り出すだけになっちゃう…」と担当の方に伝えたところ、意外な答えが返ってきたんです。「読者にしてみれば、相談に対する回答の中身よりも、余談の部分で出てくる楠木さんの仕事論がいいんです」と。

 キャリアの相談の答えの部分よりも、読んでいる人は、そこから出てくる僕の仕事論や仕事生活についての構えみたいな話を読んでくれるんですね。そこで、キャリア相談という形式に仮託して、自分の仕事論、仕事と仕事生活に対する考えを申し述べる場所にしたんです。そうすると自分でも面白く、乗って出来る仕事になりました。

 現状に不満があったり、自分の将来に対する不安もあったり…若いときって、いつの時代もそうじゃないですか。そんななか、いつの時代でもみんな、仕事をしながら、仕事に対する自分なりの考えや構え、大げさにいえば仕事哲学みたいなものを作っていくんですよね。僕の仕事論を読むことで、読者の皆さんが、自分の仕事の構えを固めるきっかけとか参考になればな、という意図でやってきました。

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