日本人は、なぜ住宅に不満を持つのか?

問題解決の方法論〈4〉

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寿命の尽きた政策による悪循環

 戦後、民生の安定のためにということで、政府は持ち家推進策を進めました。家を持つためのさまざまな優遇措置を施行しました、いまでもその優遇策は残っています。税法上の優遇などです。このことが、日本の住宅供給システムにいろいろな形で悪影響を及ぼしているのです。

 たとえば、「シャッター街」と呼ばれる商店街が全国にありますね。店舗はシャッターが閉まっているけれども、中にはおじいちゃん、おばあちゃんが住んでいるんです。高齢でもう商売はできなくなっても、住み続けている。だからシャッター街になってしまうわけです。

 お店を閉めるのでしたら、商店街に居続けるのではなく、他に住まいを探して引っ越ししてもらえばいいのです。そうして空き店舗になれば、新しい人がそこ新しい商売を始められますよね。でも、持ち家優遇策の影響で、持ち家を手放して賃貸に引っ越すなどという発想にはならないのです。都市部のそういう高齢者が引っ越して終の棲家とできるような賃貸物件を、近隣に用意することも、社会システム・デザインの重要な一面です。

 戦後復興という意味では、持ち家優遇策は大成功したわけですけれど、1970年くらいでその役割を終えたのですから、そこでいったん優遇策に終止符を打つべきでした。

――政策にも寿命があるということですね。

 日本が世界第2位の経済大国になった時期と、日本の持家率が7割を超えた時期は、ほとんど同じです。この時点で、持ち家優遇を終わりにするべきだったのです。

 お役所の仕事には常にこういう問題がつきまといます。いったん制度をつくって施行してしまうと、その制度の本来の役割を終えても、簡単には制度をやめられないということです。やめる時期の見極めと、やめるという意思決定を誰もしようとしません。

 寿命の切れた持ち家優遇策がもたらす悪循環。住宅供給システムにおいては、これが中核課題なのです。

――お客さんが新しいものを欲しがれば、供給側であるメーカーも販売店も新しいものの提供にまい進します。

 新規需要から買い替え需要中心の成熟市場になってしまうと、買い替えサイクルの長さによって販売数は増えたり減ったりする。消費者はまだ使えるものを買い替えるのであるから、景気が悪くなり収入が減れば、買い替え時期を伸ばす。すると供給側は売上げが落ち込み、もっと景気が悪化する。先の見通しが悪いから消費者は一層買い控える。耐久消費財などに見られる典型的な成熟市場の「悪循環」です。

 住宅分野も貧しい時代の貧しい住宅からの脱却という面もあり、新築中心でこれまで来ましたが、成熟市場になり、景気の見通しも悪く、人口減少という予測の影響もあるのでしょう。新築住宅着工数は毎年減り続けています。

(構成・文/田中順子)

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