日本人は、なぜ住宅に不満を持つのか?

問題解決の方法論〈4〉

2

日本の住宅問題の中核課題は何か

 住宅に関してはさらに、総世帯数と住宅ストックを見ると、1990年当時、すでに住宅は大量に余っていたのです。しかしバブル崩壊後、政府は新築住宅推進を経済刺激策としようとしていたので、住宅が実はかなり余っているなどということを、正面切って言う人は誰もいませんでした。

 広さもまあまあ以上で、数も余っているのに、何が住宅問題なのかと、大いに疑問を感じました。しかも、思い入れを持ってやっとつくった住宅も一律償却の仕組みで10年もするとタダ同然になってしまう。ちゃんと気持ちよく住めるにもかかわらずです。そこで、これもやはりハードの問題ではなく、ソフトの問題なのだと気づいたのです。住宅問題は、実は「住宅供給システム」の問題だったのです。

――住宅の供給の仕組みに何か問題があるということですね。

 そうです。OSである供給システムが上手にデザインされていないので、人々が住居に関して何かがおかしいと思い、不満を持ち続けているのです。

 そこで、私は、1992年に「住宅供給システム・デザイン」プロジェクトというものを立ち上げて、住宅の供給システムのOSのデザインに取組みました。

 当時は、マッキンゼーで働いていましたから、こうしたOSデザインが、今後、経営コンサルティングの新しいアプローチになるのではないかという期待もありました。

 しかしいずれにしても、コンサルティング・ファームではこのようなことはやっていなかったので、当時、住宅問題に関心があり、住宅供給に関係するビジネスを行いたいと考えている企業数社に協力をあおぎ、住宅供給システムをデザインするという観点で、新しい住宅市場を作る事業の可能性を模索しようと企てたのです。

 いろいろな企業に当たりました。どこも話だけは聞いてくれるものの、反応はすこぶる悪かったですね。バブル崩壊後で、住宅の供給システムなど不要不急だからということで、みな断られました。そんな中で、三井物産、トヨタ自動車、東急電鉄、大和証券がこの企画に乗ってくださった。銀行、信託銀行、生命保険会社などにもかなり声をかけましたが、乗ってくれるところはありませんでした。

 考えていくと、日本の住宅市場は、新築信仰が強く、古いものは壊してしまい、新しいものを建てるという需要が中心になってしまっていることが問題であることに気づきました。これは住宅にかぎったことではありませんが、ニュー・モデルを追い続ける電機、電子製品とは違って、住宅は世代を超えて使えるし、手を入れることで品質も上がっていくということが可能です。世界的にそういう住宅の価値評価をしています。

――でも日本では、家に対してそういう考え方はないですね。新築を購入することがステイタスになっています。

 そもそも日本人の「持ち家志向」は、戦後の産物なのです。少なくとも東京では、戦前は8割が賃貸でした。当時の信託銀行は何をしていたかというと、家賃の取り立てが大事な仕事でした。賃貸の家をたくさん持っていたんです。

次のページ  政策にも寿命がある»
Special Topics PR
Decision Maker 関連記事
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS