アストロスケール:
人類未踏の事業に挑む仲間たちが、今の思いを描く

DHBR連載「リーダーは『描く』」の取材現場レポート

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DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの連載「リーダーは『描く』」。今月は宇宙空間に漂う「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」を回収するベンチャー、アストロスケールを立ち上げた岡田光信さんです。岡田さんと一緒に描いたのは、同社の宇宙政策担当者とアストロスケールの支援に乗り出した企業の「仲間」です。3人の「描く」様子を追いました。

 

絵に対して「負のイメージ」しか持っていない参加者たち

 暖冬と言われたこの冬、2016年に入ってからも東京は春を思わせる陽気が続きました。ところが中旬に入って一変。東京でも最低気温がマイナスを記録します。今年はじめてのワークショップは、ようやく冬らしい気候となった1月13日、前回のライフネット生命に引き続いてホワイトシップのギャラリーで行われました。

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右から長谷部貴美さん(ホワイトシップ)、岡田光信さん(アストロスケール)、大沢二朗さん(オーエスジー)、山本絵里子さん(アストロスケール)

 シンガポールに拠点を置くアストロスケールCEOの岡田光信さんと、日本を拠点に宇宙政策を担当する山本絵里子さんが、スーツ姿で会場にやって来ました。絵を描くということだけ知らされていたものの、実際にどんなことをするのかわからなかったので、表情は見るからに不安そうです。実際「ドキドキしています」「絵を描くなんて小学生以来」などという言葉を口にしていました。

 もうひとり、デニムに黒のブルゾン姿で登場したのが大沢二朗さんです。大沢さんは愛知県の工具メーカー、オーエスジーの常務取締役。スペースデブリの収集・データ集積を目的とする観測衛星「IDEA OSG1」の打ち上げプロジェクトのメインスポンサーという関係です。ブルゾンの背には「Space Sweepers」の文字が。大沢さんは「やっぱりこれを着て来なくちゃね」とおどけていました。

 ワークショップが始まり、ホワイトシップ代表の長谷部貴美さんが切り出します。

「絵を描くのを楽しみにして来られた方は?」

 誰も反応しません。みなさん苦笑いを浮かべています。

「楽しみどころか、不安でしかないですね」

 大沢さんが言います。

「じゃあ、子どものときはどうでしたか?」

 長谷部さんの問いかけに、岡田さんがつぶやきます。

「絵で怒られた経験があるので、恐怖感ですね」

「僕は、下書きまでは天才だったんです」

 そう話すのは大沢さん。

「鉛筆で下書きを書いているときは、みんなに『すげえじゃん』と言われるのに、色をつけるとなぜか立体感がなくなって、平板な絵になってしまう残念な子どもでしたね」

 3人のなかで最も不安そうに見えた山本さんも、いい思い出はないようです。

「幼稚園のときまでは楽しかった気がするんですけど、小学校に入って成績がつき始めると、とたんに楽しくなくなったかもしれませんね」

 三者三様ですが、みなさん絵に対して負のイメージしか持っていないようです。

 このワークショップは、そんな人のために開発されたプログラムだと長谷部さんは言います。もともとは「絵はもっと自由に描いていい」ということを伝えるために子ども向けに考案されたプログラムで、それを大人向けにアレンジしたものです。現在では「Vision Forest」という組織変革アプローチのプログラムのひとつとして、アート教育の企画・運営やアーティストのマネジメントを行う株式会社ホワイトシップと、ビジネスコンサルティングサービスの株式会社シグマクシスが共同で企業向けに提供しています。本誌の連載「リーダーは『描く』」では、両社の全面協力のもと実際にワークショップを実施していただき、その様子を記事化しています。

 長谷部さんは「絵は上手、下手ではなく、もっと違うこともあるということを、今日はぜひ持ち帰っていただきたいと思います」と強調します。参加者の不安は依然として残っているようですが、いよいよ何十年ぶり?かの「絵を描く」時間の始まりです。

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