なぜ、「邪悪な性格」の持ち主は
成功しやすいのか?

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サイコパシー、ナルシシズム、マキャベリズム…精神科学の分野では、この3つが「邪悪な人格特性」としてセットにされる。そして高い職位と経済的成功を得た人々の間で、これらの特性がより顕著に見られるという。邪悪な性格は、成功にどう関係するのか。


「すべてのサイコパスが刑務所にいるわけではない。一部は取締役会にもいる」。これは犯罪心理学者のロバート・ヘアが講義中に述べた、有名な言葉である。なお、その講義には「身近にひそむ捕食者たち」という見事なタイトルがついていた。

 サイコパシー(精神病質、反社会的人格障害)は、人格の「邪悪な3大特性(dark triad)」と呼ばれるものの1つである。残りの2つはナルシシズムとマキャベリズムだ。

 これらの特性は、臨床的に診断される人格特性とは異なり、人口全体で正規分布していることに留意すべきである。つまり、誰もがこれらの傾向を、低・平均・高の程度はあれども持っているが、それでもまったく正常でいられる。その特性が顕著でも、それだけでは仕事や私生活において問題があることにはならないのだ。そして、邪悪な3大特性が反社会性を示唆する一方で、キャリア上ではさまざまなメリットももたらすことが、最近の研究でわかってきた。

 サイコパシーには一般に、不正直、自己中心的、無謀、非情といった傾向が見られる。

 マキャベリズムは、うわべだけの魅力(愛嬌の良さや話のうまさなど)、人心操作、偽り、冷酷さ、衝動性などと関連している。この特性が高い人は倫理観に乏しく、「目的は手段を正当化する」と考えたり、「人より先んじるためには、多少のごまかしはやむをえない」という考えに賛同したりすることが多い。

 ナルシシズムは、誇大妄想、過大な(ただし往々にして不安定で脆い)自尊心、他者を思いやらない利己的な特権意識などと関連している。その語源であるナルキッソスの神話が示すとおり、ナルシストは非常にわがままで自己愛に溺れやすく、そうなると他者を思いやることが難しくなる。

 ナルシストには魅力的な人も多く、「カリスマ性」と呼ばれるものはナルシシズムが持つ対人的に望ましい側面だ。イタリアの政治家シルビオ・ベルルスコーニ、カルト教団「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズ、そしてスティーブ・ジョブズなどがその典型である。

 ドイツの代表的な企業数社を対象とした最近の研究で、ナルシシズムは給与水準と正の相関を示し、マキャベリズムは職位の高さおよびキャリアの満足度と正の相関を示した(英語論文)。これらの相関は、人口統計的属性、在職期間、組織の規模、勤務時間の影響を調整した後でも有意なレベルにあった。

 それ以前の別の研究では、15年間もの継続的調査によって次のことが判明している。サイコパシーやナルシシズムの特性を持つ人は組織階層の上位に多く見られ、経済的な成功度も高い(英語論文)。これらの発見と一致する研究として、ある推定によると、臨床レベルでサイコパシーと判断される人々が企業の取締役会に存在する割合は、全人口に占める割合より3倍も高いという(英語論文)。

 これはまた、ビジネス界におけるサイコパスに関する古くからの概念にも通じるところがある。精神科医でサイコパシー研究の先駆者であったハーベイ・クレックレーは、1940年の古典的名著The Mask of Sanity(正気の仮面)の中でこう指摘している。サイコパスのビジネスマンは勤勉に働き、しごく正常に見える。ただし、「不倫、他者への冷酷さ、暴飲、過度のリスクテイク」が周期的に見られる。

 なぜ、こうした悪しき輩が成功するのだろうか?

 その一因は、彼らの持つ暗黒面には、明らかにポジティブな部分もあるからだ。正と負の両面を併せ持つ性格について調べたある研究によると、外向性、新しい体験への積極性、好奇心、自己肯定感などは、一般に邪悪な3大特性を持つ人のほうが高い(英語論文)。また、3大特性は競争力を高める傾向もある――ただし、仕事で協力や利他的行動をしないことによってではあるが。

 さらに別の研究では、サイコパシーとマキャベリズムは、威嚇と誘惑という2つの手段を助長することが示された(英語論文)。こうした戦術で潜在的なライバルを怯えさせ、上司を魅了するのだ。このことは、これらの特性の持ち主になぜ演技がうまい人が多いのか、そして(短期的な)性的関係に成功しやすいかの理由にもなる。

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