まだ、ゲーミフィケーションは死んでいない
――書評『GAMIFY ゲーミファイ』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第20回は、ガートナーでリサーチ担当バイスプレジデントを務めるブラインアン・バークによる『GAMIFY ゲーミファイ』を紹介する。

一過性のブームで終わらせないために

 書店で『GAMIFY ゲーミファイ』を見つけた瞬間、私は「なんでいまさら?」と思ってしまった。

 数年前、「ゲーミフィケーション」という言葉が流行した時のことを覚えている方も多いのではないか。雑誌では特集が組まれ、ゲーミフィケーションをテーマにした書籍が何冊も出版された。だが、最先端のコンセプトとしてあれほど話題になったにもかかわらず、最近ではほとんど耳にすることがない。珍しい話ではないが、コンセプト先行で実践がともなわずに消えて行ったのだろう、そう考えていた。

 本書を読み終えた時、自分の理解の浅はかさに気づかされた。たしかにゲーミフィケーションが極度にもてはやされたのは事実だが、それを正しく理解し、実践することで成果を挙げている企業が存在する。そしてそれは、SNSが一般化した現在において、より大きな影響力を生み出しつつあった。

 筆者のブライアン・バーク氏は、ICTアドバイザリー企業ガートナーでリサーチ担当バイスプレジデントを務める人物である。序章「ゲーミフィケーション――熱狂のあとに」というタイトルに象徴されるように、バーク氏はゲーミフィケーションが一過性のブームで終わりつつある事実を客観的調査から示し、その現実に真摯に向き合おうとする点は非常に好感を持てる。ゲーミフィケーションを取り巻く現状を俯瞰し、無条件に礼算することはせず、そこに現実的な可能性を見出しているのである。

 特筆すべきは、「ゲーミフィケーション」という用語をしっかりと定義し、混同しがちな概念との棲み分けを行なっていることだ。筆者(ガートナー社)は、「ゲーミフィケーションとは、ゲームメカニクスおよび体験デザインを駆使し、人々が自身の目標を達成できるよう、デジタル技術を利用してやる気にさせ、動機づけることである」とした。ゲームメカニクスとは何か等の詳細な解説は書籍に譲るが、ポイントは人を動機づけることとシンプルにその価値を表現したことである。

 本書では、コンピュータゲームや報酬プログラムなどとの差異も簡潔にまとめている。また、内的報酬と外的報酬の違い、ビジネス目標ではなくプレイヤー目標を持つことの重要性など、動機づけの基本的な原理とゲーミフィケーションの関連も明示されている。そのうえで、ゲーミフィケーションを使うべきケースとそうでないケースも体系的にまとめられており、実践にも参考になるだろう。

 ゲーミフィケーションというコンセプトが一過性の流行に終わりつつある背景には、こうした基本的だが極めて重要な作業がおろそかにされていた点が挙げられるのではないか。それをきっちり整理しただけでも、意味を持つ書籍だと考えている。

 胸が熱くなるようなドラマチックな展開はなく、比較的淡々と書き進められている本である。しかし、その裏には、このコンセプトを一過性のブームに終わらせたくないという筆者の想いも感じられた。本書は、これからゲーミフィケーションを論じるうえでの基本書になるのではないか。

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