Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

全ての高齢者が使える情報技術を生み出すことが
「課題解決型先進国日本」の未来を切り開く

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2007年、日本の高齢化率は21%を超え、世界で初めて超高齢社会に突入した。その後も高齢化率は上昇。2014年には26%に達し、このままのペースが続けば2025年には約30%、2060年には約40%に達すると予想されている。2060年には現役世代1.3人で1人の高齢者を支えることになる。こうした厳しい状況下で日本が経済成長を続け、また、人々が幸福でいられるための武器として期待されているのがICTの利活用だ。ICTをどのように利活用すれば、超高齢社会と共存していけるのか、APEC高齢社会ICTプロジェクト委員長などを務める早稲田大学教授の小尾敏夫氏に伺った。

高齢化、少子化、人口減少の三重苦に悩む日本

――日本が直面する高齢化社会への対策として、世界に通じる「日本モデル」を提唱されています。いったいどのようなものですか。

小尾 敏夫(おびとしお)
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科・政治学研究科 教授
慶應義塾大学経済学部卒業。同経済学研究科修了。早稲田大学博士号(国際情報通信学)取得。国連開発計画企画官、コロンビア大学日本経済経営研究所主任研究員、労働大臣秘書官などを経て、2001年より早稲田大学教授。早稲田大学電子政府自治体研究所所長、APEC電子政府研究センター所長、総務省電子政府推進員協議会会長、国際CIO学会世界会長、国連ITU事務総長特別代表なども務める。

 高齢化は日本特有の問題ではなく、実は世界中で進行しています。医療が発達し、生活水準が向上して平均寿命が伸びたからです。高齢化率が上昇すれば、「医療費の上昇」や「年金給付額の上昇」をはじめ、さまざまな問題も起こってきます。高齢者が自動車事故の加害者になるなど、ひと昔前では考えられなかった問題も次々に起こっています。世界は、日本がどうやって超高齢社会特有の問題を乗り越えるのかを見ています。言い換えれば、超高齢社会の下で経済成長や人々の幸福を追求するモデルを確立できれば、それは「日本モデル」として世界に通用するのではないかと考えたわけです。

 しかし、日本が抱えているのは、高齢化問題だけではありません。少子化、さらに人口減少まで起こっています。世界の人口は50億人から70億人、さらには90億人になろうとするほど増えており、人口減少に悩んでいるのは日本と韓国くらいでしょう。少子化と人口減少が進めば高齢化率に加速度がついていきます。この3つの深刻な問題をICTの利活用によって克服できるはずだとの期待が高まっています。ICTによる超高齢社会問題の解決、それがICT立国として日本が生きる道であり、また「日本モデル」になると予想しています。しかし解決すべき問題は山積です。

――どこから手をつければいいのでしょうか。

 一番大切なのは、20年後、30年後の日本の姿をどうとらえるのかです。たとえば、1億人を具体的にどうキープしたいのか。その選択肢によって、シナリオは変わってくるはずです。ところが、そうした明確なビジョンがないまま方法論ばかりが先行しているという状態です。

 シナリオが描けない一つの原因は縦割り社会だからでしょう。そもそも超高齢社会、少子化、人口減と情報社会問題をまとめて議論する場がありません。政府は盛んに「横断的に」とか「横串を入れて」とか言います。しかし、行政は何十年経っても相変わらずの縦割り。縦割り社会はある種の日本文化なので、社会風土や文化を変えていくパラダイムシフトが起きない限り、動かないでしょう。シームレスなICTには、その起爆剤としての役割が期待されています。

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