「アジェンダ」という視点から
イノベーションの創出を目指す

【特別対談】
セールスフォース・ドットコム 小出伸一CEO ×
デロイト トーマツ コンサルティング 近藤聡社長

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「日本発のイノベーションが少なくなった」と言われて久しい。最近の動きを見ると、ウーバーやエアビーアンドビーなど海外発イノベーションに対する「守りの姿勢」が目立つ。こうした現状を打破してイノベーションを創出するために、日本企業には何が求められているのだろうか。セールスフォース・ドットコムのCEOを務める小出伸一氏と、デロイト トーマツ コンサルティング社長の近藤聡氏が語り合った。

「課題解決」から「アジェンダ設定」へ

――セールスフォース・ドットコム(以下、SFDC)、デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)はともに、顧客企業の成功に向けてサービスを提供するという意味で、同じ立ち位置でビジネスを展開している企業です。日本の時間軸で言えば、東京オリンピックから高度経済成長を経て、ものづくりの強さだけでは世界で勝っていけない、スピードについていけないと言われるなど、ビジネス環境が大きく変化しています。その中で、顧客との向き合い方は変わってきていますか。

近藤 クライアントの依頼を受けて戦略策定や変革のプランづくり、その実行などをサポートするのが従来のコンサルティング会社の役割です。非常にやりがいのある仕事ですが、リーマンショックや東日本大震災という経済や社会を根底から揺るがす出来事が続き、最近は「このままでいいのか」という思いも募っています。「すでにある課題に対応する」というスタイルでは、新たな価値や突き抜けたイノベーションを創出するのは難しいかもしれません。自ら取り組むべきことを設定して動くことで、社会に対してより大きな貢献ができるのではないかと考え始めたのです。

小出 伸一
セールスフォース・ドットコム
代表取締役会長兼CEO
1981年日本アイ・ビー・エム入社。ハードウェア、アウトソーシング、テクニカルサービス、ファイナンシャルサービスの各事業の責任者を務め、2002年には取締役に就任。日本アイ・ビー・エムに24年間在籍後、ソフトバンクテレコム(旧:日本テレコム)に入社、副社長兼COOに就任。2007年より6年4ヵ月間、日本ヒューレット・パッカード代表取締役社長執行役員として、同社のハードウェア、ソフトウェア、サービスの各事業ならびに全業務を統括。2014年4月より現職。

 そこで、私たちが挙げたキーワードが「アジェンダ」。社会課題解決や新産業創造をアジェンダ、つまり、国や社会全体で取り組むべきこととして掲げ、官民、NPOを巻き込んでイノベーティブな提案をしていきたいという思いです。

小出 アジェンダは重要なキーワードですね。日本企業はかつて高品質かつ低コストに象徴されるエクセレント・カンパニーが山ほどあり、ものづくりで世界を席巻しましたが、その後はイノベーションという言葉からは程遠い国になってしまったように思います。市場が成熟し、ものが溢れる時代においては、従来のようなやり方ではお客様は振り向いてくれません。それは、多くの企業にとっての課題でしょう。

 クラウドサービスを提供する私たち自身も、変わらなければなりません。プロダクトアウトやテクノロジーアウトといった、従来型のアプローチではお客様のイノベーションの実現に貢献することは難しい時代になりました。そのため、従来型のアプローチから脱却し、お客様とアジェンダを共有して、一緒にビジョンをつくっていこうというアプローチへの転換を始めています。容易なことではありませんが、私たち自身が、ITベンダーという枠組みを越え、お客様の「Trusted Advisor」となり、一緒にどうなりたいかというビジョンを作って成し遂げる。それが、お客様の変革やイノベーションにつながっていくと考えています。

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