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3DプリンターがIoT/ビッグデータとつながることで生まれる
「新デジタルものづくり」の可能性

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約3年前に大ブームとなった3Dプリンター。3DCGや3DCADなどのデータを、3Dプリンターで印刷すれば、どんなに複雑な形でも、データ通りに再現できることに人々は驚いた。現在は出力スピードも飛躍的に速くなり、使用できる素材の種類も増えた。しかしその本当の可能性は、IoT技術、ビッグデータなどと融合し、「新デジタルものづくり」全体をプラットフォームでつなぐことであるという。日本における「ファブラボ」の発起人であり、3Dプリンター研究の最先端を走る慶應義塾大学環境情報学部の田中浩也准教授に伺った。

「つくる」「つかう」「わかる」の循環を生み出す

――IoT、ビッグデータとの融合によって、3Dプリンターの可能性はまだまだ広がるそうですね。

田中浩也(たなかひろや)
慶應義塾大学 環境情報学部 准教授、ソーシャルファブリケーションラボ代表
京都大学総合人間学部卒業、東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)。東京大学生産技術研究所助手などを経て、2005年、慶應義塾大学環境情報学部専任講師、2008年より現職。2010年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学科客員研究員。新しいものづくりの世界的ネットワークであるファブラボの日本における発起人であり、2011年には鎌倉市に拠点「ファブラボ鎌倉」を開設。2012年、慶應義塾大学SFC研究所「ソーシャルファブリケーションラボ」代表。

3Dプリンターは、デジタルデータさえあれば、どんな複雑な物体でも一品単位でつくり出せるすばらしい技術ですが、それ単独でできることの限界も見えています。特に、デジタルデータから「もの」に出力した後、どうするのか。「とりあえず、つくってみた」から先の可能性が見えにくかったと思います。

 一方、IoTにおいて、センサリングやモニタリングの技術が急速に発展してきました。IoTの一つの側面として、ユーザーがどのように「もの」を使っているのかを遠方からでも確認できるということがあります。

 大きく整理をすれば、デジタルデータから「もの」をつくり出す技術が3Dプリンター、つくられた「もの」を使っていくなかで履歴としてデジタルデータを蓄積する技術がIoTととらえられます。この二つの技術が合体すれば、「つくる」という工程と、「つかう」という工程が、デジタルにつながることになります。また、「多様な人々がものをどう日常で使っているのか」という知見を含んだビッグデータを蓄積できれば、製品の問題点やユーザーのニーズが「わかる」はずです。

 このように、デジタルデータと「もの」をハイブリッドに組み合わせて、「つくる」「つかう」「わかる」の切れ目のない循環をつくり出すことが、「デジタルものづくり」の本当の姿なのではないでしょうか。私たちはいま、文部科学省のCOI(Center of Innovation)プロジェクトも進めていますが(感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会)、新しいものづくりに関する、大きなビジョンを描こうと毎日議論を続けています。

――3DプリンターとIoTは、どのように融合させるのですか。

 具体的には、昨年3Dプリンターの出力中に、センサーやRFID(無線タグ)などを埋め込めるような新たな機種を開発しました。また、電子回路を高速で試作し、3Dプリンターでつくった外装と組み合わせられるような機械も設計中です。

 このようなセンサー埋め込み式の新しいタイプの機械を、もう「3Dプリンター」という言葉はやめ、「IoTファブリケーション」と呼ぶことにしました。3Dプリンターでは外装だけしか出力できませんが、IoTファブリケーションでは機能もつくり出します。

 さらに今後、ものの使用状況をビッグデータとして解析するためのサーバー技術も開発しなければいけませんが、まずは約120万ファイルといわれる世界中のネット上にある3Dデータを収集し、グーグルのように検索可能とするサーバーをつくりました。この成果はすでに、http://fab3d.cc/に公開しています。これらを拡張しながら、数年かけて「IoTファブリケーションプラットフォーム」に進化させる計画です。

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