経営学は「思考の軸」になる
――書評『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第19回は、早稲田大学ビジネススクール准教授、入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』を紹介する。

間違いだらけ?のビジネスの常識

 「アイデアを出すために、ブレストは効率がよい方法だ」「グローバル企業が増えている」「多様性のある組織は創造性が高い」……。これらはビジネスの場で良く耳にし、なかば常識とされているような事柄ばかりだ。皆さんはこれらを正しいと思っているだろうか。実は近年の経営学では、これらに反する結果が出ているという。

 本書『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』は、2013年までニューヨーク州立大学バッファロー校で助教授をつとめ、現在は早稲田大学ビジネススクールで教鞭をとる入山章栄氏が、最先端の経営学の知に基づいてビジネスの課題を解き明かす1冊である。

 前著『世界の経営学者はいま何を考えているのか』を読まれた方も多いかもしれないが、本書では「イノベーション」「グローバル化」「女性の企業参加」「同族経営」など、日本で話題になりやすいテーマと経営学の知を絡めてあるところが特徴であろう。

 多くの人が経営学と聞いて思い浮かべるのは、ポーター、クリステンセンらの名前かもしれない。実はポーターの『競争の戦略』が日本で発刊されたのは1982年、クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』は2001年と、随分と月日が流れている。これらの名著はいま読んでも有用で、そこから学べることはもちろん多いが、ポーターやクリステンセンだけが、経営学のすべてではない。現在進行形で、経営学の知は蓄積されており、新たな研究が日々行われている。

経営学の知が、私たちに与えるもの

 さて、冒頭で取り上げたブレストを、新製品の企画やキャンペーン立案の際などのアイデア出しに使っている企業は多いだろう。しかし、世界の経営学研究では「ブレストでアイデアを出すのは、実は効率が悪い」という結果が出ているという。効率が悪いならブレストなんて止めよう!と思うかもしれないが、それはそれで早計だ。ブレストには「アイデアを生み出すこと」を超えた役割があるということも、別の研究から導きだされているのだ。

 上記のような最新の経営学の知に触れることで、私たちは何を得られるのだろうか。これらの知がそのまま、企業の戦略に対して明快な答えを出すものではないし、すぐに利益に結び付くものではないだろう。

 しかし、組織をマネジメントする時、ビジネスを取り巻く競争環境を分析する時、海外に進出するかしないか戦略を考える時など、私たちがビジネスで直面する課題を考える際の指針になることは間違いない。そして、当たり前のように受け入れている現状に対して、経営学の知は新たな視座を与えてくれる。

 本書を読み通すと、経営学の知は私たちの「思考の軸」になり得ることが確信できるだろう。

 

無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
DHBRおススメ経営書」の最新記事 » Backnumber
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking