「日本企業だから」の呪縛を解く

~グローバル化でも日本の先を行く新興国企業

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先進国の常識を覆す新興国企業(EMNC)の最新動向に詳しい、INSEADのアミタバ・チャットパディヤイ教授は、新興国はイノベーションの宝庫であり、進出企業が何より注力すべきは現地顧客との対話だという。これなくして現地の人々を理解することはできない。新興国に限らず、日本企業の海外進出に立ちはだかる難題である。

学び続ける仕掛けを作る

後藤(以下色文字)前回、新興国を起点に新たな市場機会を捉えイノベーションを実現する先進国企業の例とともに、「顧客と対話する」ことの重要性をご指摘いただきました。日本企業には決定的にこれが不足しているようです。この状況を打開するにはどうすればいいでしょうか。

アミタバ・チャットパディヤイ
Amitava Chattopadhyay
INSEAD教授(マーケティング)
GlaxoSmithKline Chaired Professor of Corporate Innovation
ブランドとイノベーションの専門家。『ジャーナル・オブ・マーケティング』ほか一流誌に30年で60以上の論文を寄稿、『ジャーナル・オブ・コンシューマーリサーチ』の年間最優秀論文受賞。近著The New Emerging Market Multinationals: Four Strategies for Disrupting Markets and Building Brandsはストラテジープラスビジネス誌 「2012年ベストビジネス書」に選ばれた。

チャットパディヤイ教授(以下略) 何より経営層が、考え方を変える必要があります。現場で新興市場の機会が見つかっても、経営層にとってあまりに異質な話なので、真剣に取り上げないことが多いからです。

 それに、多すぎる社内階層を減らす必要もあります。たとえば、新興国の現場がまずリージョン長に報告し、そのリージョン長が本社の事業部長に報告し、その事業部長がようやく本当の意思決定者に報告できるような、現場が遠い組織が少なくありません。階層が多いとスピードが遅くなり、また現場にも組織を動かすための負担が余計にかかります。シンプルな報告系統を作ることも必須です。

――そうした実例はありますか。

 GEは事業軸中心の組織ですが、インドと中国のイノベーションプロジェクトではCEO直轄制を採用しています。それゆえ、階層に悩むことはありませんでした。ノバルティスのArogya Parivar(インドの貧困層の健康課題に取り組む社会事業)も、取締役会直轄のプロジェクトでした。大企業では官僚制組織が不可欠ですが、そこに風穴を開けなければならないのです。なぜなら、この種の取り組みの核心は、「起業家になること」にあるからです。

 もしこうした新事業に皆が平等に口を出せば、そのプロジェクトは途中で止められてしまうでしょう。こうした取り組みは、東芝であれ三菱であれGEであれ、先進国企業の過去の成功体験に合わないからです。だからこそ、どう経営層が直接つながりを作り、事業創造を仕組みとして運営できるかが重要なのです。

――お話を伺うと、顧客や現場からいかにうまく学び続けるかがポイントに思えます。

 そうです。試行錯誤と実験を通じて、常に現実から新たに学び、それを現実に適用する繰り返しです。

――新興国企業は、そうした組織学習が得意なのでしょうか。それとも、単に出身が新興国だから新興国市場をよく知っているだけなのでしょうか

 確かに、自分の国だからその国をよく知っているというアドバンテージはあります。同時に、他国の市場でも何が起こっているかを学ぶ力が高いようです。 

 Godivaを買収したトルコの菓子メーカーUlkerがよい例です。ふつうチョコレートビスケットは、ビスケットの外側にチョコレートがついています。しかし、北アフリカでは、現地に冷蔵物流がありませんでした。暑くてチョコが溶けてしまう国で、どうやってチョコレートビスケットを劣化させずに売るか。Ulkerは、Biskremという商品でチョコをビスケットの中に入れる技術を開発しました。現実を学び、包み紙にチョコが溶けない解決策を生み出したのです。

 同じトルコの化粧品会社のEvyapも、市場に合わせた香水やせっけんを打ち出しています。消費者の美意識が違うので、ロシア向けの商品はトルコ向け商品とは大きく変えています。 UnileverのLux Supremeを買えば、ニューヨークでも東京でもニューデリーでも、基本的に同じ香りがするのとは対照的です。

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