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「成果」を売る戦略:
顧客価値からつくるビジネスモデル

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IoTによる最大のチャンスは、顧客の情報が得られることによる個別サービス事業への変換である。画一的な製品をつくる企業であっても、顧客の利用体験ごとに応じた事業の仕組みが可能になる。言い換えると「モノ」を売るビジネスから「成果」を売るビジネスへの転換である。このビジネスモデルを創造するには、新たなケイパビリティが要求される。

現代は
「複合競争の時代」に入った

清水 新 Arata Shimizu
アクセンチュア 執行役員 戦略コンサルティング本部 統括本部長
学生時代に起業し、ベンチャー企業の共同経営者を経て、1997年にアクセンチュア入社。2005年最年少でエグゼクティブパートナーに昇進し、通信・ハイテク担当を務める。2011年にはモビリティサービスグループリードを兼務し、国内のプラクティス立ち上げを行う。2015年より現職。

 今日、すべての産業において2つの複合的な競争が起きている。

 1つ目が、技術や機能をめぐる従来の「インベンション(発明)競争」である。事業におけるポジショニングが重要であることは疑いの余地はないが、他社との差別化において、新たな機能の開発が優位性になる。この競争は80年代から続き、いまなお綿々と続いている。新しい技術の開発による新しい機能の創造に終わりはない。

 ただし、製品をめぐる競争は、コスト競争につながりやすい。同じモノをいかに安くつくるかも技術の1つであり、その結果、労働コストが安い国に生産拠点を移し、低価格を実現し利益を上げるという競争だ。この熾烈な価格競争は勝者なき業界の低迷を招く可能性もあり、またコモディティ競争に陥ると規模での勝負となってしまう。

 そこで到来したのが、2つ目の新たな競争、顧客の体験をめぐる競争である。デジタル・ディスラプション(デジタルによる創造的破壊)により、モノづくりはインベンション競争からイノベーション競争に拡がりを見せつつある。単なる新しい技術・機能の競争ではなく、これらの組み合わせによる、新たな顧客体験の創造がイノベーションとなるのだ。この競争はB2B、B2Cのすべての領域で始まっている。

石川雅崇 Masataka Ishikawa アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 セールス&カスタマーサービス アジアパシフィック統括 マネジング・ディレクター 同志社大学卒業後、1995年にアクセンチュア入社。ノースウエスタン大学経営大学院(ケロッグ校)アドバンスドビジネスマネジメントプログラム(エグゼクティブMBA)修了。現在は顧客戦略領域のアジアパシフィック統括として、デジタルによる企業戦略策定、IoTによる企業変革を推進。グローバルにおけるアクセンチュアの知見/論考を取りまとめるデジタル編集委員の一人。

 顧客体験とは、すなわち顧客価値である。ハーバード・ビジネススクール教授のセオドア・レビットが「顧客はドリルを求めているのではなく、穴を開けたいのだ」と語ったように、顧客は製品ではなく成果を求めているのだ。顧客にどのような成果をもたらすかが「顧客価値」である。この顧客価値はデジタル・ディスラプションによって、実践への道が大いに開けたと言える。つまり「手段を売る時代」から「成果を売る時代」に変化したのだ。

 顧客体験では「これができる」というモノ(手段)に価値を見出すのではなく、「こういう結果が出た」という成果に応じて価値が評価される。20%のコスト削減につながる機器に価値があるのではなく、下がった20%のコスト自体に価値があるのだ。

 デジタル技術によって顧客に応じた体験を提供できるようになった。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)により製品をインターネットにつなぐことで、製品の持つ機能をそれぞれの顧客に体験価値に応じて最適化する仕組みも構築できる。この変化は従来のインベンション競争に加え、イノベーション競争を加速させている。新たな顧客体験を提供するためには、単なるモノ売りの事業モデルから、モノ+サービスを売る事業モデルへ転換しなければならない。それが「成果を売る」事業モデルである(図表1「複合競争の時代とIoT」参照)。

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図表1 複合競争の時代とIoT 今日、すべての産業において2つの大きな競争が複合的に起き始めている。IoTは、この複合競争時代における新たな戦い方である。
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