消費者の情動は意思を決め、
行動を左右する

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従来のマーケティングリサーチでは、消費者にアンケートやインタビューをすることでその嗜好を探り、それを製品・サービスに活かすのが一般的であった。だが、消費者は本当に自分のことを正しく認識しているのであろうか。さまざまな実験により、彼らが言語化したニーズは思い込みである可能性も高いことがわかってきた。真のニーズを探りビジネスで成功を収めるためには、潜在意識、つまり脳を知ることが重要である。NTTデータ経営研究所ニューロイノベーションユニット長を務めるなど、ニューロマーケティングの最先端を知る萩原一平氏が、ビジネスと脳の関係を解き明かす。連載第3回。
 

人間には喜怒哀楽が不可欠である

 ディズニー/ピクサーのアニメーション映画『インサイド・ヘッド』(原題:Inside Out)をご存じだろうか。

 物語の主人公は、11歳の少女ライリーである。田舎から都会に引っ越すという環境の変化を経験した彼女の心の変化を捉え、ライリーの頭の中にある、喜び(ジョイ)、怒り(アンガー)、嫌悪(ディスガスト)、恐れ(フィアー)、そして悲しみ(サッドネス)という5つの感情を擬人化したキャラクターの混乱やぶつかり合いを描いている。[注1]

 この映画は、複雑な人間の感情がなぜ必要なのかを示している。日本でも「喜怒哀楽」と言われるが、なぜ喜怒哀楽が必要なのだろう。「怒」の感情がなければ、世の中、もっと平和だろう。「哀」の感情がなく「喜」や「楽」の感情だけなら、世の中、もっとハッピーなのに。

 喜怒哀楽が必要なのは、人間という種がこの500万年の間、進化・存続するために欠かせないものだったからだ。「喜」びがあるから人は積極的になり、生きることに前向きになれる。「怒」りがなければ、他の動物や敵などに対して威嚇ができず、簡単に襲われてしまう。「哀」しみがあるから、人は他人に共感でき、仲間を守ることができる。そして、「楽」しいからもう一回やってみたい、続けようと思う。

 すべての行動は喜怒哀楽(実際にはもっとさまざまな感情がある)の結果である。また喜怒哀楽は意思決定の原因であり、コミュニケーションの基本的ツールなのである。

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