記憶の仕組みを知ることが
マーケティング成功の近道となる

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従来のマーケティングリサーチでは、アンケートやインタビューから消費者の嗜好を探り、それを製品・サービスに活かすのが一般的であった。だが、消費者は本当に自分のことを正しく認識しているのであろうか。さまざまな実験により、彼らが言語化したニーズは思い込みである可能性も高いことがわかってきた。真のニーズを探りビジネスで成功を収めるためには、潜在意識、つまり脳を知ることが重要である。NTTデータ経営研究所ニューロイノベーションユニット長を務めるなど、ニューロマーケティングの最先端を知る萩原一平氏が、ビジネスと脳の関係を解き明かす。連載第2回。
 

「女優=きれい」「お笑い芸人=おもしろい」は思い込み?

 あなたの目の前には、美人女優、かわいい女性タレント、お笑い芸人、バラエティタレントの顔写真が数枚置かれている。いずれも皆さんがよく知っている芸能人ばかりだ。その写真を見ながら、「きれい」「さわやか」「女性らしい」「おもしろい」など、それぞれの印象を選択式のアンケート(主観評価)で答えることになった。

 想像通り、美人女優やかわいい女性タレントは「きれい」や「さわやか」なキャラクターに分類され、お笑い芸人やバラエティタレントは「おもしろい」と分類された。ところが、写真を見た時の脳反応を脳波計で観察すると、好感度の高い女優や女性タレントは「おもしろい」キャラクターとしても捉えられていたという。

 この情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)で行われた実験結果は、主観評価では、無意識のうちにある種のステレオタイプや先入観のもとで、「女優=きれい」「お笑い芸人=おもしろい」と答えを決めつけているということ、そして同時に、脳は正直に相手の印象に対して反応していたということを示していると言える。[注1]

 私たちはふだんあまり意識せずに論理的にアンケートに回答しているが、その一方では本音、つまり感覚的には異なる印象を持っている。いずれも無意識のうちに、脳の中にある論理的な記憶と、感性的・情動的な記憶の両方を参考に行なっていることなのである。

[注1] 萩原一平『ビジネスに活かす脳科学』(日本経済新聞社、2015年、p.49~50)
 
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