CEO個人の力と組織の競争優位、
どちらが業績に貢献するのか?

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経営トップの質と企業業績との相関性は、議論が尽きないテーマだ。しかし本記事の筆者は投資家の観点から、経営者の能力・資質よりも「経済的な堀」、つまり競争優位のほうが重要であるという。

 

「バリュー投資の父」と呼ばれるベンジャミン・グレアムは、投資先企業の経営者にめったに会わなかった。彼らはグレアムの耳に入れたいことしか言わないように思われたこと、そして、彼らの人柄から受ける印象に影響されたくなかったことが理由だ。グレアムの優秀な教え子にして伝説の投資家であるウォーレン・バフェットも、同じ考えの持ち主だった。「優秀であると評判の経営者が、経済性の悪いことで知られる会社の立て直しに取り組んでも、変わらないのは会社の評判のほうだ」

 グレアムやバフェットのようなバリュー投資家は、健全な資本利益率を持続させる源泉とは人的資産ではなく、いわゆる「経済的な堀(economic moat)」、つまり収益やコストにおける構造的かつ強固な競争優位だと考える。収益性を守る堀は通常、無形資産(ブランドや特許を含む)、高いスイッチングコスト、ネットワーク効果などからもたらされる。またコスト優位の堀は、安価または迅速なプロセス、好立地、他社にない独自の資産、会社の規模などで成り立つ。

 そうした堀のおかげで、企業はさまざまな技術革新や業界の変動が進むなかを生き抜くことができ、創業者は世界有数の資産家に上り詰めることもある。ビル・ゲイツやカルロス・スリム(メキシコの通信事業経営者)、アマンシオ・オルテガ(インディテックス創業者)、ラリー・エリソン(オラクル創業者)がその好例だ。

 こうした堀、すなわち競争優位を有する企業について、見過ごされがちな興味深い事実がある。スタンダード&プアーズが格付けする企業全体のCEOの離職率と、過去20~30年の間に大成功を収めた企業のそれを比べると、前者のほうが10~20倍も高いのだ。

 後者の好例がインディテックスだ。1963年の創業後、いまでは世界最大のファッション・グループとなったが、その間にCEOを務めたのは、創業者のアマンシオ・オルテガとその後継者の2人のみである。かたやドイツ銀行では、長年の業績不振に苦しむなか、この5年間でCEOが3人も代わった。いずれの人物も金融業界で輝かしい経歴を誇っていたが、同社の業績を回復できなかった。

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