「伝統型」から「再生型」まで、
事業環境から導く5つの戦略スタイル

BCGの「戦略パレット」活用法【後編】

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事業環境に適した戦略を選ぶためにBCGが開発した「戦略パレット」活用法の後編(前編はこちら)。戦略スタイルの5大典型を、リーダーはどう見極め実行すればよいのか。


 ここからは、戦略の各スタイルを使いこなす方法と、それぞれが特定の環境でどう真価を発揮するのかを、もう少し掘り下げて見ていこう。

●伝統型(Classic)

 伝統型の戦略スタイルを取るリーダーは、自分たちの世界は予測可能であり、競争の基盤は不変であり、いったん手に入れた優位性はずっと有効だと考える。このような企業は、自力で環境を変えることはできないという前提に立ち、その範囲内で最適なポジションを獲得することを目指す。それを実現するためには、他社を上回る規模、差別化、ケイパビリティが土台となる。

 伝統型の環境では、ポジションの優位性は持続する。その事業環境は予測可能で、破壊的変化をきたすことなくゆっくりと進展するからだ。

 この環境で最善のポジションを目指すリーダーは、次のような流れで考える。まず競争優位の基盤を分析する。そして自社のケイパビリティと市場との適合性(フィット)を検証する。そして、それらが将来的にどう展開するかを予測し、優位なポジションを確立・維持するための計画を立てる。最後に、その計画を厳密かつ効率的に遂行する。

 菓子・ペットケア製品の世界的なメーカーであるマースは、伝統型の戦略で成功した企業の1つである。規模の優位性を確立できるカテゴリーとブランドに注力し、それらのカテゴリーを成長させることで価値を生み出してきた。このアプローチが功を奏し、マースは創業から1世紀をかけて、複数のカテゴリーで市場をリードする年間売上高350億ドルの企業となった。

 読者にとって最も馴染み深いのが、この伝統型戦略かもしれない。実際のところ、戦略とはこのアプローチを指すと考えている経営者は多いだろう。ビジネススクールで教わるのも伝統型であり、大半の大手企業の戦略部門は何らかの形でこれを実践している。

●適応型(Adaptive)

 事業環境を予測することも変えることもできない場合、企業は適応型の戦略を採用する。予測が難しく優位性が長続きしない状況で、絶え間なく続く混乱を生き残るには、みずからを変え続けていく即応性と能力を持つ以外に道はない。適応型の環境で成功するには、継続的な実験と新たな選択肢の発見を、他社よりも素早く低コストで行うことで変化に適応しなければならない。伝統的な戦略家が唱える持続的な競争優位の代わりに、ここでは一時的な優位性を連続させていくことが主眼となる。

 適応型のアプローチを取る企業は、実験を通して成功するために、重要な3つの思考ステップを習得している。まず、実験の対象となる戦略オプションをさまざまに用意し、手法をあれこれ変えながら試していく。そこから最も成功したものを慎重に選び出し、本格展開して利益獲得を目指す。そして環境が変わるたびに、この発展的サイクルを素早く繰り返すことで、優位性を継続的に更新していく。

 適応型の戦略スタイルは、伝統型ほど入念に考え抜くものではない。優位性は分析、予測、最適化によってではなく、新たな物事を次々と試すことによって生み出される。

 IT関連のサービスとソリューションを提供するインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズは、予測することも変えることもできない環境下で活動する企業の1つだ。同社は繰り返される技術的なシフト(たとえばクライアントサーバからクラウドコンピューティングへの移行など)と、その結果として顧客のビジネスや競争基盤に生じる変化に、絶えず適応している。

 環境の監視、戦略的実験、組織の柔軟性を重視する適応型アプローチを取ることで、同社の売上高は1996年の1億5500万ドルから、2003年には10億ドル、2013年には130億ドル超へと拡大し、純粋なITサービス企業としては世界第2位の規模に成長した。

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