デジタル時代を生き抜くマーケティングの「型」

ブランド価値トップ10企業の試行錯誤に学ぶ

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デジタルが消費者の行動を大きく変えている。必然的に企業組織も顧客起点でのデジタル対応が求められる。その主役はマーケティング組織でありCMOだ。今回は、経営をデジタルにシフトしていくには何から始めればよいかを考察する。

マーケティング組織のデジタルシフト

前回、顧客に「伝える」から「巻き込む」へと進化するコンテンツに求められるものは、顧客にとってその製品やサービスを使う経験を自分事にさせる「クリエイティブ・ジャンプ」と、出会いから付き合うタイミング、適切な告白時期までを個人にあわせて提案する「データドリブン」であると述べた。クリエイティブ・ジャンプは、コンテンツを構築するにあたってはデジタル以前から必要とされていることであり、クリエイターのセンスの領域でもあるが、データドリブンのマーケティングは、デジタルがもたらした非連続的な変化といえる。

岡崎 恒
デロイト デジタル
エグゼクティブ ブランド
ストラテジスト

 データドリブンのマーケティングを実現するためには、顧客のペルソナ(人物像)に応じ個別にメッセージを開発・運用することが必要であり、かつてのマーケティング活動以上に手間がかかり、負担が重くなるのも事実である。それをできるだけ効率的に運用しようとする結果、コンベンショナル(従来的)なマーケティング部門にITリテラシーを持つ人材を入れなければならない。

 さらに、デジタルが求める組織のケイパビリティは人材の投入だけでなく、マーケティング部門とシステム部門の連携でマーケティングという機能を成立させる段階を迎える。異なるバックグラウンドを持つ2つの部署の連携は、初期段階でギャップが生じることも多い。米国においても、当初はその状況が多く見られていたが、それを乗り越えたポイントは、両方の部署をリスペクトできるCMOの台頭にあった。日本企業がデータドリブンのマーケティングを可能にする組織にシフトするためには、マーケティング部門とシステム部門を横断した概念を持ち、上流から下流までの知識・経験を持ったスーパー人材の登用・育成をしなくてはならないのである。

CMOの存在がマーケティングを変える

 データドリブンを叶えるためにはマーケティング部門とシステム部門の連携が欠かせない。そのことは、考え方としては理解されても、日本企業の組織では、従来的なマーケティングを主導するのがマーケティング部門であることは間違いないが、マーケティングで必要とされているデータ管理はシステム部門という、部門をまたいだ運営体制となっているケースが多々見られる。この状況では、投資や情報などのリソースを最大限に活かすことは不可能だ。

 ここに興味深いデータがある。CMOの存在である。米国においてフェーチュン500社のうちCMOが存在する企業は62%を超える(*1)

 一方、日本においては時価総額上位300社のうち、CMOの存在が見られる企業は0.3%程度にすぎない。CMOを設置し、マーケティングを統合的に率いていくことが、マーケティング組織のデジタルシフトの巧拙を決める。しかし、なぜC (chief)クラスが必要なのか。

 それは至って簡単である。マーケティングそのものが企業の顔づくりであり、マーケティング施策は売上に直結する。そして、市況の変化に敏感に反応し、常にCEOと密接に情報を交換して即座に判断を要求される。だから、CMOという立場が必要となるのだ。

*1 神岡太郎『CMO マーケティング最高責任者――グローバル市場に挑む戦略リーダーの役割』ダイヤモンド社、2006年
 
 
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