見える化、そして「言える化」

システム思考対談:枝廣淳子×中竹竜二【後編】

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いま再注目の問題解決アプローチ「システム思考」。『システム思考をはじめてみよう』の訳者・枝廣淳子さんと、ラグビー日本代表コーチングディレクターの中竹竜二さん。おふたりの対話を通して、システム思考が組織のマネジメントや個人の成長にどのように役立つかを探る。(撮影:和田剛)

 

ダブルループ学習から生まれた翻訳術

中竹:枝廣さんは、むかしから物事を俯瞰して見る人だったんですか?

枝廣:そうですね……3歳のときにこんなことがあったんです。母親に連れられて京都の町のお祭りに行って、私は人形劇の出店を夢中で観ていた。その時ふと、こう思ったんです。私は箱の中で一生懸命やっている人形劇をここで見ている。だけどもしかしたら、もう一つおっきい箱があって私はその中にいるのかな? その箱のさらに上にまた箱があったりして……。

中竹:かなり早熟ですね。でも、いま言われた俯瞰する感覚ってどう身につけたらいいんでしょう?

枝廣:数年前から翻訳者のトレーニングをしているんですが、そのときに必ず、翻訳者としての椅子と、読者としての椅子、2つの椅子を用意しましょうと言っています。訳し終わったら、別の椅子に移って読んでみる。そうすると翻訳者の椅子に座っていたときには気づかなったことが見えてくる。

中竹:へー! いざ翻訳するときって、どうやっているんですか?

枝廣:実は私……すごく変な翻訳の仕方をするんです。ふつう翻訳するときって、英語の原文を読んで、日本語の訳文をPCとかにタイピングしていくんですが、これすごい時間がかかるんですよね。それで自分の翻訳作業を観察してみたら、どこまで訳したかを探していたり無駄なことが多くて、これじゃあ集中力が途切れてしまうなって。だからやり方をまったく変えたんです。

中竹:どう変えたんですか?

枝廣:録音機を置いて、本を持って、英語の原文を見ながら日本語でそれを読み上げるんですよ。サイト・トランスレーションという、目で文章を追いながら同時に通訳するトレーニングを受けたことがあったので、そうだ、これを使おうと。そうしたら、翻訳にかかる時間が10分の1になりました。

中竹:すごいなあ。画期的ですね。

枝廣:システム思考でもよく言うんですけど、今までのやり方で問題解決するのはシングルループ学習、やり方そのものを疑って新しいアプローチを見出すのがダブルループ学習。後者をやらないと、人も組織も成長が止まってしまうと言われています。

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