8つのメガトレンドが照らす未来

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電気自動車の市場拡大やスマートモビリティの急速な進展が自動車産業のバリューチェーンと競争環境を変えつつある。破壊的ともいえる変化にさらされるのは自動車産業だけではない。ロボット、IoT、AI、ゲノムといった技術進化によって、多くの産業においてバリューチェーンの抜本的な組み替えと、それに伴う主要なプレーヤーの交代が起こりつつある。その背景にある「メガトレンド」を見通し、惜しみなく投資をする企業が2030年の市場を制する。

グーグルが自動車産業の頂点に立つ日

 新車販売台数でグーグルが世界一の座を奪取した――2030年2月、こんなニュースが世界を駆け巡るかもしれない。

 冒頭から刺激的なたとえで驚かせてしまったとしたらお詫びするが、けっして現実味のない話ではない。電気自動車の市場拡大やスマートモビリティの急速な進展は、自動車産業のバリューチェーンと競争環境をすでに変えつつある。

 エンジンを持たないシンプルな構造の電気自動車の部品点数は、ガソリン車の3分の1から3分の2程度とされる。工程が簡素化されることでバリューチェーンも短縮される。それはすなわち、新規参入のハードルが下がることを意味する。長いバリューチェーンにつながるサプライヤーや下請け、あるいは監督官庁との調整や高度なすり合せが従来ほど必要とされなくなることで、異分野からの参入が容易になるからだ。

 一方、インターネットにつながる情報システムを搭載したスマートカーが普及すれば、車両という「モノ」単体ではなく、安全で快適かつ安価な移動を実現するためのシステム全体で、その価値が評価されるようになる。

 競争の重心がハードウエアの安全性や効率性から、ソフトウエアや車載センサーなどによって生成されるデータを解析してさまざまなサービスに生かす力へとシフトすることで、既存の自動車メーカーとはまったく別の新規プレーヤーが自動車産業の頂点に立つ可能性が生まれる。トヨタを抜いてトップに立つのが、グーグルではなくアップルやテスラ、あるいはまだ誰も聞いたことのない新星であったとしても何ら不思議はないということになる。

誰もメガトレンドから逃れられない

 破壊的ともいえる変化にさらされるのは自動車産業だけではない。その背景にあるのは、どんな産業もその影響から逃がれることのできない「メガトレンド」である。

 メガトレンドを前にすべての企業は2つに分かれる。1つは、この不可逆的な動きが生み出す機会を捉えて、新たなバリュープロポジションを確立する企業。そしてもう1つは、それに失敗し、流れに飲まれて淘汰される企業である。

 両者の違いは第1に、メガトレンドを把握するための取り組みに表れる。事実、グローバル企業の多くはメガトレンドを捉えるための努力を惜しまない。未来を知ることは無理でも、濃い霧の先に目を向けて思いを馳せることはできる。それは、目の前の顧客や市場を調査、分析したりするのとはまったく別の、大局観をつかむための努力である。

 第2に、さまざまなデータや情報が示唆する未来への向き合い方に両者の差が出る。メガトレンドがもたらす未来はしばしば、成長の時代を生きてきた世代、企業でいえばトップマネジメント層の経験や直感に反するものとなる。世界にこれから何が起きるのかを、くもりのない目で見つめて受け入れることは、かつての成功が大きいほど容易ではない。そもそも、メガトレンドをつかむための作業においても、過去の経験や実績、現在の事業ポートフォリオや市場ポジションが判断を歪ませることがある。

 闇雲にメガトレンドをつかもうとすれば、真偽のわからない情報に翻弄される。不透明な事業環境のなかで大局観を持って先を見通すには、フレームワークが必要だ。そこで本稿では、「EDGE」と「PRISM」という2つのフレームワークを提示したい。

「EDGE」は、経済(Economy)、人口動態(Demographics)、地球環境(Geoenvironment)、エネルギー(Energy)という4つの視点から定量的なデータを集める。一方、「PRISM」は、経営へのインパクトが大きい政治(Politics)、宗教(Religion)、技術革新(Innovation)、社会動向(Social Movement)から主に定性的な情報を取り揃える。これら8つの視点はそれぞれ独立したものではなく、互いに絡み合いながらより大きなうねりとなって、あらゆる産業の競争環境を抜本的に変えていくだろう。

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