人工知能ビジネスの開発は、
「データ」と「ビジネスモデル」の2軸で考える

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昨今、人工知能という言葉をよく耳にするようになったが、最新のテクノロジーをビジネスにつなげるためには越えなければならないハードルがある。科学界と経済界双方のニーズを満たし、新たなビジネスを生み出すためにはどうすればよいのか。Recruit Institute of Technology 推進室の室長を務める石山洸氏が語る。連載第3回。
 

人工知能ビジネスをつくるために、
まずは「データ」から考える

 前回、現在の人工知能ブームの背景として、以下の4つを挙げた。

石山 洸(いしやま・こう)
Recruit Institute of Technology 推進室 室長
2006年、東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了し、リクルート入社。インターネットマーケティング室などを経て、全社横断組織で数々のWebサービスの強化を担い、新規事業提案制度での提案を契機に新会社を設立。事業を3年で成長フェーズにのせバイアウトした経験を経て、2014年、リクルートホールディングスのメディアテクノロジーラボ所長に就任。2015年より現職。

 0)アルゴリズム

 1)データ

 2)ビジネスエコシステム

 3)教育

 実際の企業にとって、2)ビジネスエコシステムと3)教育はよりマクロな背景と言える。一方で、0)アルゴリズムと1)データは企業固有のミクロな問題を孕んでいる。そのため各企業が人工知能(AI)を活用したビジネス参入を検討する場合は、アルゴリズムとデータから検討しよう。

 さらにアルゴリズムについて見ると、この分野ではソリューションを提供するサードプレーヤーが多数おり、アウトソースが比較的容易である。だが、データに関しては、それぞれの企業が解決すべき固有の課題となるため、AIビジネスを考えるうえではまず、自社で保有するデータから考え始めるのがよい(アルゴリズムについては後述)。

 たとえば、第1回で紹介した肩もみロボットを開発するには、以下のようなデータが必要となる。

 肩もみロボット用にAI開発をするプロセスではまず、上図における白部分のデータ(「どこがこっているか」「どんなふうに揉んだら」「気持ち良い or 悪い」)をAIに学習させることになる。するとその後は、入力データの「どこがこっているか」の情報のみで、「どんなふうに揉めば」「気持ち良い」かを予測できる。言い換えれば、白部分に該当するデータを大量に保有しているからこそ、「どんなふうに揉めば」「気持ち良い」という予測が可能となる。そうした予測の結果から肩もみロボットを開発できるのだ。

 ここで白に該当するデータとは、誰もが保有できるものではない。たとえば、肩もみサービスを人力で提供していた会社だからこそ溜まるデータや、既存の顧客接点に対するセンサー技術など、新規ソリューションを導入することで取得できるデータである。すなわち、既存の顧客接点やデータを活用することで、他社にはないユニークなAIビジネスに参入できるポテンシャルが上がるのだ。

 下図を見ていただくと、顧客接点がAIビジネスの入口であり、かつ、出口となっていることが理解できるだろう。前述の通り、アルゴリズムそのものはアウトソースが比較的容易であったり、オープンソースのアルゴリズムを活用することができる。グーグルが自社サービスで使っている機械学習技術のライブラリのテンソルフロー(TensorFlow)を公開した事例は、この象徴とも言える。

 そのため、AIを活用したビジネスについての検討を始める場合には、起点となる自社の強みとしての顧客接点から始めるとスムーズに考えることができる。

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