管理職を置かない組織が理想なのか?
導入前に自問すべき4つの質問

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階層を廃し「サークル」単位で動く組織形態のホラクラシーは、あらゆる企業に適しているわけではない。しかし導入せずとも、ホラクラシーについて考えることは自社の敏捷性を見直すうえで有益となる。

 

 アルフレッド・スローンは、ゼネラルモーターズ(GM)で近代的企業のあり方を見出した時、軍隊組織のヒエラルキーを参考にした。会社を複数の部門に分けて各々にリーダーを置く。権限は上位下達式で、責任は職務階級に応じて決まるものとした。

 現在、少数の企業がそれとは根本的に異なるマネジメント手法を用いている。メディアプラットフォームのミディアムや、コンサルティング会社のデイビッド・アレン・カンパニー、eコマースのザッポスなどが採用しているのは、管理職を置かない自己管理型の組織形態である「ホラクラシー」だ。

 私は従来と異なるマネジメント手法について研究してきたが、標準的な組織図を廃して、複数の連動する「サークル」を設けるこの手法については懐疑的だった。より深く理解するために私は先日、新刊Holacracyの著者ブライアン・ロバートソンと膝を交え、なぜ彼が数百の企業から賛同を得ているのかを知ろうと試みた。

 この革新的な概念を巡っては、激しい議論がある。しかしロバートソンと話すにつれ、ホラクラシーの大部分は、優れたマネジメントによく見られる要素を単に体系化していると気づいた。ホラクラシーの導入にまつわる細部にとらわれず、それが何に対処するためのものなのかを掘り下げて考えれば、見えてくることがある。問題は、ヒエラルキーそのものがいかに正当性を失ったかではなく、速まっている世の中の動向に対してヒエラルキーでは動きが遅れることなのだ。

 まったく新しい組織形態へと一足飛びに移行するのは、大改革であり、落とし穴もある。そこに突き進む前に、まずは敏捷性という問題そのものについて、もっと真剣に考えるべきではないだろうか。

 ロバートソン自身、ホラクラシーは万人向けでないことを認めている。私も、そのような会社で働きたいかどうかいまだに迷っている。だがすべてのマネジャーにとって、ホラクラシーが解決しようとしている問題への理解を深めることは有益となるはずだ。

 そこで導入に踏み切る意思があろうとなかろうと、企業とマネジャーが答えなければならない4つの問いを以下に示したい。

1.自社の使命は何か

 戦略とは知性と理論の産物と見なされることが多いが、実際には、戦略の大部分を決定づけるのは使命だ。企業使命は組織全体で共有する原則となるため、経営学の専門家たちは戦略的意図とも呼んでいる。使命とは企業の存在理由であり、製品・サービス群を届けることよりも上位にある目的・意義である。

 たとえばサウスウェスト航空なら、格安の航空会社であろうとする使命が、航空機の購入から航空路線の競争まで、すべての行動の原動力になっている。グーグルは、世界の情報を整理するという使命に共感する世界レベルのエンジニアたちを惹き付けている。テスラの「持続可能な輸送手段へのシフトを加速する」という使命は、自動車製造の域を超越している。

 私は、自社の使命を明確に述べることができるマネジャーや現場の従業員が、非常に少ないことに常々驚かされている。そして、差別化された使命を持つ企業も少ないように見える。これは大きな問題だ。「従業員へのエンパワーメント」や「意思決定の権限を下に委ねる」などと盛んに論じても、使命共有の意識がなければ、そのどれもが混乱を引き起こさずにはすまない。

 伝統的なヒエラルキーを廃するホラクラシーによって、企業の中核的使命を前面に据えやすくなる。資格、任務、報告義務を記載した標準的な職務記述書を用いる代わりに、達成すべきことが明確にされた役割を従業員に割り当てる。そして、その役割は定期的なガバナンス会議で更新される。

 もちろん、ホラクラシーは使命を明確にする唯一の手段ではないが、組織内の全員に目的意識を与えることを重視する。この特徴をふまえて他の企業を見ると、その多くが明確な方向性を欠いていることが如実にわかる。これは誰もがもっと注意を払うべき問題だ。

2.仕事が実際にどう遂行されているか

 ほとんどの企業は、組織全体の規則性を促進するためにルールと手続きを設けている。従業員は所定の時間に仕事を始め、タイムシートや請求書を決められた方法で記入しなければならない。こうした数々の決まりごとが、秩序と効率につながると考えられている。

 だが、現実の世界では期待どおりにいくことはめったにない。あなたの会社では、ルールが当てはまらない事態が生じた時に、従業員が他の方法で対処できる判断力を持っているだろうか。

 残念ながら、仕事の遂行方法をめぐる期待と実情の乖離は、しばしば組織内での深刻な対立につながる。乖離が大きすぎるとマネジメントは正当性と信頼を失い、そうなれば、たとえ企業使命を適切に示していても従業員の共感を得にくくなる。

 ツイッターとミディアムの共同創設者、エヴァン・ウィリアムズはこう書いている。「ホラクラシーの原則の1つは、暗黙の物事を明確化することである」。暗黙知を形式知に変えることは確かに重要だが、それを実践するために組織をひっくり返す必要はない。多くの場合、率直で誠実なリーダーシップがあれば可能である。

 マネジャーは自社における仕事の遂行方法について、「べき論」に基づく先入観を捨て、実態を理解し支援しなければならない。

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