デジタル革命の真のインパクトとは何か
――書評『限界費用ゼロ社会』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第17回は文明批評家のジェレミー・リフキン氏の『限界費用ゼロ社会』を取り上げる。

 

いま議論の的となっている「資本主義の未来」

 資本主義が生み出す格差を論じて、世界的なベストセラーとなったトマ・ピケティの『21世紀の資本』をはじめ、最近、資本主義をテーマとする本がよく目につく。インターネットの本格的な普及から20年、その後のデジタル技術の進歩は目覚ましく、同時に進行したグローバル化とも相まって、経済や社会のひずみや変貌が誰の目にも明らかになってきたようだ。そして、この問題意識は、経済学者のみならず、他の分野の識者たちにも広がっており、経営学のグールーであるフィリップ・コトラーやヘンリー・ミンツバーグも、最新著において、資本主義の課題を分析し、新たな経済社会への指針を提示している。

 本書『限界費用ゼロ社会』も資本主義の未来図を描いた本である。ご存じのとおり、タイトルにある「限界費用」とは、モノやサービスを一つ追加で生み出す費用をいう。これがIoTなどデジタル技術の進歩により、限りなくゼロに近づき、やがては多くのモノやサービスは無料(フリー)になる。限界費用がゼロ、というのは、生産性や効率性が極限にまで高まった状態であり、資本主義の究極の姿なのだが、ここにパラドックスがある。限界費用がゼロという状況では、企業の利益は消失し、資本主義は衰退を免れないのだ。その代わりに台頭してくるのが、共有型経済(シェアリングエコノミー)で、人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀には実現する、という。

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