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ベンチャー・キャピタリストが語る
投資対象としての技術ベンチャーの魅力

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上場はゴールではない! 企業価値300億円を目指せ

――投資をするかどうかの決め手はどこですか。

  最終的には人です。アーリーであればあるほど人ですね。会社の体を成してないわけですから、要するに投資とは「お前に賭ける」という話なんです。信用できるか、やる気はあるか、逃げないかということでしょうね。

  もちろん年齢的なものもあります。ゲームのような若者中心のマーケットで売っていく商品であれば、20代に投資するケースもけっこうあります。私たちにとってスマホは電話ですが、若者にとってはインターネット端末。こうした人たちを相手にするコンシューマービジネスを考えるのは、上の世代には無理ですから、20代の起業家が多くなるのは当然です。一方、企業向けのB to Bサービスになれば、30代、40代が中心になります。ある程度の社会経験がなければ、そもそも解決すべき問題点がわからないからです。

――最近の技術ベンチャーの起業家に対して、ご意見・ご要望などはありますか。

  上場をゴールと勘違いしているのではないか、という人が少なくありません。ですから、上場した翌年には経営者が変わっているといったことがよく起こります。上場はさらなる成長のための資金調達の手段。そこから先の絵が描けていなければ、上場する意味はありません。WHILLの場合は、海外戦略があり、世界標準の車椅子になるといった絵があります。IPOは、いわばその途中にある追加のロケット。さらに先に進むために点火する手段なのです。

  そうした上場後の目標がないからモチベーションが維持できなくなり、公開時の株価が最も高く、デイトレーダーの売り買いに翻弄されて乱降下を繰り返し、その後は低迷したままといった運命をたどるわけです。上場後に企業価値が増えないというのはある意味、株主に対する裏切りです。まずはデイトレーダーに売り買いされないようにある程度の規模、企業価値でいえば300億円くらいを目指すべきでしょう。そのくらいの規模になれば長期保有をしてくれる機関投資家が買ってくれるので経営が安定します。

――投資対象として今後、注目される業界はどこでしょう。

  農業、医療、教育など、比較的IT化が遅れている業界には大きなチャンスがあると思います。ベンチャーキャピタルにとってのターゲットはディスラプティブイノベーション、つまり既存業界が破壊されるくらいの変革です。既存業界をつくり変えてしまうくらいの変革には大きな企業価値が期待できます。ベンチャーキャピタルのビジネスにはその大きな企業価値が必要なのです。野球に例えれば、イチローみたいにコツコツ当てていくというスタイルではファンドのパフォーマンスはあまり期待できません。松井、清原、(高橋)由伸のようなホームランバッターを並べて、三振覚悟でブンブン振り回す。そこでホームランが出れば儲かるといった商売なのです。

  IT化が進んでいる業界にもチャンスはあります。IT化の取り組みが非常に早かった金融業界では、フィンテック(金融テクノロジー)革命が急速に進み、異業種からの参入も相次いでいます。脅威に感じた銀行などはフィンテックを得意とする起業家向けのコンテストをしばしば開催するようになりました。いい企業がいれば提携したり買収したりしようと考えていると思われます。でも、そうした企業は総じて純資産に対する企業価値、すなわちのれんが高い。今後はそのような企業の買収に対する審査をどうするのかがポイントになると思います。

(構成/竹内三保子 撮影/三浦康史)  

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