あなたが「見られたい自分」に変わる方法
――書評『だれもわかってくれない』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第16回は、コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンスセンター副所長を務めるハイディ・グラント・ハルヴァーソンによる『だれもわかってくれない』を紹介する。
 

認識・判断を歪めるバイアスの存在を知る

 業界でも“おしゃれ”で有名な経営者にインタビューした際、こんな会話を交わしたことがある。とても素敵なスーツを着ていたので「服装には普段から気を遣いますか?」と尋ねると、こう答えた。「今日はどんな仕事で、どのような人に会うかを想像して服を選びます。『これにしようと』一度着たものでも、思い直して着替え直すこともありますよ」。彼は普段から、誰に、何を伝えたいのかを意識し、それを的確に表現するためにすべきことを心がけていたのだ。

『だれもわかってくれない』というタイトルに、ハッとさせられた方も多いのではないか。こんなに頑張っているのに、自分が思ったようには周囲から評価されない。ビジネスの世界に限らず、似たような話を聞いた経験は一度や二度ではない。ただ残念ながら、本書の冒頭で触れられているように、「見られたい自分」になる完璧な方法は存在しない。しかし、自分がどう見られているかを知ることは、みずからの意図を正しく伝えるうえで役立つことは確かである。

 そもそも、人は他人をどのように判断しているのか。一般に、人が対象を認識して決定を下すうえでは2つの段階があるとされる。第1段階の「フェーズ1」は、意識外で行なわれる直感的な働きであり、「引き出される結論はバイアスに満ちたもの」だと筆者はいう。そして第2段階の「フェーズ2」は、いわゆる論理的・理性的な判断に近く、「努力と注意を要し、たいていは意識的に行なわれ」るものだ。だがフェーズ2では努力を要するがゆえにそれを怠ってしまう結果、無意識的にバイアスに満ちた判断を下してしまう。これが自分と周囲の評価に溝を生む大きな原因である。

 著者のハルヴァーソンは社会心理学者であり、この分野における第一人者の一人である。心理学やコミュニケーションの関連書を読み慣れている方には既知の議論が続くことも否めない。だが、人が認識・判断をするうえでどのようなバイアスがかかりやすいのかを丁寧にひも解き、いかに行動すべきかを体系的にまとめ上げた点において、本書を手に取る価値は十分にある。

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