人工知能を自社ビジネスに活かすには、
「レーズンパン人材」の採用がカギ

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昨今、人工知能という言葉をよく耳にするようになったが、最新のテクノロジーをビジネスにつなげるためには越えなければならないハードルがある。科学界と経済界双方のニーズを満たし、新たなビジネスを生み出すためにはどうすればよいのか。Recruit Institute of Technology 推進室の室長を務める石山洸氏が語る。連載は全4回を予定。
 

人工知能ビジネスは
経済界と科学界の中間にある

 いま、人工知能ほど世の中のお騒がせしているものはない。人類の夢が託されていると言う人もいれば、ブームやバブル、悪魔という悲観的な見方さえもある。人工知能を研究している研究者に聞けば、きっと答えを教えてくれるはずと思うかもしれない。しかし、それぞれの意見が異なり、余計にわからなくなってしまうだろう。

 シンギュラリティもわかったようでわからない。「2045年に人工知能が人類の知能を超えるって、あぁ、2000年問題とかノストラダムスの大予言とかあったよね。その仲間みたいなものか?」と思っている人もいるかもしれない。ドラえもんとグーグルが並列に語られてしまうことすらあるのが現状だ。

 ビジネス的にはどうだろうか。「一定の不確実性下でリスクとリターンをマネジメントすれば良いR&Dなのか?」と問われても、不確実どころか定義そのものが不明確なので、そもそも投資対象なのかもわからない。ただ、隣の企業を見れば猫も杓子も人工知能だと事例をつくるのに躍起になっている。しかし、その1つひとつの事例は、機械学習なのか人工知能なのかすら曖昧だ。

 それでも、人工知能ビジネスのレースはすでに始まっている。このレースは誰にも止められない。科学界と経済界を巻き込んだレースが一気に始まっているのだ。

 人工知能は極めて汎用的な技術だ。適応できない産業はなく、すべての経営者が人工知能に関する戦略を考えなくてはならない。機械学習をはじめとする工学系の分野はもちろん、脳科学、心理学、哲学のような人間の探求にまつわる分野、そして、経済学や社会学といった社会システムを研究する分野でも研究の必要性がどんどん高まっている。

 人工知能の定義が曖昧な一方で、人工知能ビジネスのオペレーションは驚くほどシンプルだ。

石山 洸(いしやま・こう)
Recruit Institute of Technology 推進室 室長
2006年、東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了し、リクルート入社。インターネットマーケティング室などを経て、全社横断組織で数々のWebサービスの強化を担い、新規事業提案制度での提案を契機に新会社を設立。事業を3年で成長フェーズにのせバイアウトした経験を経て、2014年、リクルートホールディングスのメディアテクノロジーラボ所長に就任。2015年より現職。

 経済界はIRで評価され、科学界は論文で評価されるが、人工知能ビジネスはその狭間にある。そのため、人工知能ビジネスに乗り出す企業は、経済界には「イノベーションを起こすからデータを提供してほしい」と依頼し、科学界には「資本を提供するから人材を提供してほしい」と依頼する。つまり、人工知能ビジネスとは論文をIRに変える脚本と演出で、経済界と科学界をドライブするビジネスである。

 インターネットの出現により、高速で製品をリリースし、大量のデータが得られるようになった。人工知能に関する新しい研究成果の発表や新製品リリースのニュースは止むことはない。その結果、人工知能ビジネスは“劇場”と化しているのである。

 私は、大学院で人工知能について学び、卒業後に入社したリクルートではインターネットマーケティングを担当した。現在は、2015年に設立した人工知能研究所(Recruit Institute of Technology:RIT)で室長を務めた。そして同研究所の拠点をシリコンバレーに移すことに伴い、米国での研究成果をリクルートグループの事業に結びつける活動を行っており、経済界と科学界の橋渡しを行なっている真っ只中である。

 本連載では、人工知能“劇場”の成功要因となる「ビジネスモデル」「教育」「データ」の3点について解説するとともに、最終回ではそれまでの議論を俯瞰したうえで、脚本と演出の一歩先にある「人類と人工知能の共進化」をテーマに“シンギュラリティ”について解説する。

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