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オープンデータ活用がもたらすイノベーション

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多種多量のデータを分析・解析し、ビジネスに役立つ知見を導き出すビッグデータ活用の重要性が高まる一方で、近年、注目を集めているのが「オープンデータ」である。オープンデータとは文字通りオープンなデータを指し、政府や自治体などが持つ公共性の高い情報を、二次利用可能な形式で提供するもの。オープンデータの活用によって、IoTの可能性はさらに広がることが期待されている。オープンデータ研究の第一人者、東京大学大学院情報学環教授の越塚登氏に聞いた。

組織の透明性を高め、行政コスト削減につながる

――オープンデータとは何でしょう。ここに来て、注目を集めるようになった背景などを教えてください。

 政府や自治体が持つ膨大な情報を二次利用が可能なオープンなデータとして開放することです。「情報公開」と違いは、プログラムが書きやすいデータ形式、API(Application Programming Interface)、ライセンスの下、公開される点です。世界的なきっかけの一つはオバマ大統領によるオープンガバメントの推進です。透明性の高い政府運営を目指し、政府情報をデータとしてのオープン化を進めました。これによって、市民が国のためにプログラムを書く「コード・フォー・アメリカ」という運動も発生し、最近では、市民がITを活用して地域課題を解決する「シビックテック」といった取り組みに発展しています。

越塚 登(Noboru Koshizuka)
東京大学大学院情報学環教授
1994年、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。東京工業大学助手、東京大学大学院助教授などを経て、2009年より現職。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所副所長、トロンフォーラム学術教育WG主査、IoT WG副主査、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(VLED)理事なども務める。

   データをオープン化することで、組織の透明性は向上します。また、サービス開発を外部化(Crowd Sourcing)することで、サービス開発コストを削減できるというメリットがあります。政府や自治体の情報サービスは非常に重要ですが、すべてを官がつくる必要はありません。データを公開することで、市民や民間企業の協力が得られるというわけです。情報サービスを構成する要素の中で最もコストがかかるのは、使いやすく、ユーザーにやさしいユーザーインターフェースをつくるところです。ここを外部に委託できれば、行政コストは大幅に削減できるでしょう。

 米国と並び先駆的な取り組みで知られるのが英国です。英国政府は、ロンドンオリンピック(2012年)開催に合わせてオープンデータ戦略を進めました。地下鉄やバス、自転車がどこにあるのか、といった公共交通データをオープン化し、民間にトランスポーテーションサービスの開発を依頼しました。その経済効果は25億~98億円とも試算されています。2013年に英国・北アイルランドで開催された主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)でオープンデータ活用の推進を提案したのも英国です。各国首脳が「オープンデータ憲章」に合意し、今後、G8で進捗状況を検証すると取り決められ、それを受ける形で日本はオープンデータに本腰を入れ始めました。

  そこで見えてきたのは、市民に影響を与えるデータは中央政府だけではなく、むしろ自治体がはるかに多く持っているということ。中央政府は、国全体の統計データなどは持っているけれど、市民の生活に直結したデータの多くは自治体にあり、これをオープンにしたほうがメリットは大きいことがわかってきました。

 現在は、資金難にあえぐ地方自治体が行政サービスを向上させるときに、オープンデータをどのように活用するかが一番のテーマになっており、地方創生の観点からも注目を集めているところです。

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