企業の持続的成長における
CFOの果たすべき役割

デロイト トーマツ グループ CFOプログラム

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企業のCFO(Chief Financial Officer)が一堂に会するイベントでは日本最大規模であるデロイト トーマツ グループ主催の「CFO VISION」。今年で3回目となる 「CFO VISION 2015」が9月9日、119社のCFOの参加を得て帝国ホテル 東京で開催された。「未来を築く企業の挑戦」をテーマに、企業の持続的成長とそれを支えるCFOの役割について、深い議論が交わされた。

多角化による成長は
挑戦の証し

デロイト トーマツ グループ CEO
小川陽一郎氏

 開会のあいさつに登壇したデロイト トーマツ グループCEOの小川陽一郎氏は、「企業は今、さまざまな変化を余儀なくされているが、リスクをチャンスと捉えれば、大きな飛躍の可能性が広がる」と語り、“未来を築く企業の挑戦”と題した今回の「CFO VISION」では、「事業の新陳代謝を促すための構造改革などを含め、持続的な成長のために果敢に挑戦する企業の在り方とCFOの果たす役割を考えたい」と続けた。

 次に「旭化成の挑戦~昨日まで世界になかったものを~」と題して旭化成社長の浅野敏雄氏が基調講演を行った。現在の旭化成は「ケミカル・繊維」「住宅・建材」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」の4つの領域で事業を展開しており、傘下に10社の事業会社を持つ純粋持ち株会社となっている。

 浅野氏はまず最近のトピックとして2つの海外M&A(合併・買収)の事例を挙げた。1つは2012年に買収した米医療機器メーカー、ゾール・メディカル。AED(自動体外式除細動器)で世界シェア1位の会社で、「医療分野での橋頭堡を固めるため、救命救急機器で高いプレゼンスと強い事業基盤がある会社を買収した」と浅野氏はM&Aの狙いを語った。買収に伴うのれん償却負担を含めてもすでに黒字化しており、ゾール・メディカルの成長の勢いは続いている。

旭化成株式会社
代表取締役社長兼社長執行役員
浅野敏雄氏

 もう1つは、2015年8月に買収を完了したばかりの米ポリポア・インターナショナルだ。同社はバッテリー(電池)の主要部材であるセパレータ(絶縁材)の製造大手。実はノートパソコンやスマートフォンなど民生用リチウムイオン電池のセパレータでは旭化成が世界1位のシェアを持っているが、ハイブリッド車や電気自動車など車載用ではポリポア社が強みを持つ。「高い成長ポテンシャルを持つバッテリーセパレータ事業でシナジーを創出する」(浅野氏)のが狙いである。

 繊維事業から始まって、石油化学事業、住宅事業、LSI事業と、多角的に成長を遂げてきたDNAを持つ旭化成だが、1990年代以降は事業の再構築を進めるとともにグローバルな事業展開に注力してきた。その集大成ともいえるのが、2つの大型M&Aだったのである。

 旭化成は2015年度を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画において、既存事業に5400億円、非連続成長(M&A)に4600億円、合わせて累計1兆円の戦略投資を実行してきたが、非連続成長投資の大半をこの2社の案件が占めたことからも、高い意気込みのほどがうかがえる。

 同社の多角化の歴史は、時代のニーズに応えて事業構造を柔軟に変え続けてきた「挑戦の証しでもある」と浅野氏は説明する。そのキーワードは「変化と不変」。市場の変化に対応して新たな事業や技術を創出しながらも、変えてはならないものは決して変えない。それは「絶えず挑戦を求める企業風土であり、その挑戦を許容する自由闊達で風通しの良い社風」である。

 今後も持続的な成長のために果敢に挑戦し、変化し続けることを目指す旭化成だが、2016年度からスタートする次期中期経営計画では、現在の4つの事業領域を「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つに再編する。マテリアルは高収益化、住宅は安定継続成長、ヘルスケアは高成長と各事業領域の位置付けを明確化することで、グループ全体としての成長と収益性の両立を図るとともに、専門性の向上や人財・技術の高度化と融合を実現することで新事業の創出力を強化していく。

 こうした中長期の経営計画策定、事業ポートフォリオの転換においてはCFOとそのスタッフが主導的な役割を果たしている。そして、来年からはIT戦略の統括がCFOの役割として新たに加わる予定で、同社においてその位置付けはますます重みを増している。

 そうした中で浅野氏は、「時にはCEOと意見が異なる場合もあるかもしれないが、CFOとしての覚悟を持ってその役割、責任を果たしてもらいたい」と確固たる気構えを求める。そして、「理念やビジョンなど企業のコアとなるものの伝道師として、CEOと同じ役割を果たしてほしい」と、会場に集まったCFOたちに期待を寄せた。

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