デジタルが変えてしまったコンテンツの姿 

顧客を巻き込むクリエイティビティ

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デジタル環境が企業行動を変えている。なかでもマーケティングの変化のスピードはすさまじい。顧客のインサイトを定義し、企業の姿勢や商品・サービスを消費者に的確に伝達し、興味・関心をもたらしてエンゲージする、という一連の活動そのものを変えてしまい、マーケティングとは何か、という根源的な問いを突きつける。その解を探っていくと、コンテンツという課題に直面する。

デジタル時代に求められるコンテンツ

 コンテンツのあり方が激変している。企業が革新的な価値を宣伝することに主眼を置き、マスに対して一方的に情報を提供していた時代にコンテンツに求められていたのは「ビッグアイデア」「ひらめき」であり、企業で練り上げて完成されたメッセージをいかに強いインパクトをもって届けるかがその役割であった。

岡崎 恒
デロイト デジタル
エグゼクティブ ブランド
ストラテジスト

 ところが、デジタル上で顧客と会話を継続し、さらには商品開発の段階から消費者と対話し、社会ニーズとマーケットを確認したうえで発売に至るといったプロセスにおいて、コンテンツクリエイティビティに求められるのは、あらゆるコミュニケーションにおいて企業からのメッセージを伝え、顧客を巻き込むことである。つまり、コンテンツは完成形のないものになっている。

 企業が消費者に対して伝えるべきメッセージを明示し、コミュニケーションをデザインし、インフラも含めて実現する。それを、ウェブサイトや情報配信サービス、SNSなどの新たな方法でアウトプットし、エンゲージできる顧客体験まで引き上げなければならない。コンテンツはすでに次世代に入っている。

デジタル環境を活かすコンテンツの役割

前回、顧客との会話を継続する「動的コミュニケーション」として、3つのポイントを挙げた。

1.常に顧客の目線から商品価値を定義する
2.興味を醸成するコンテンツを出し続ける
3.スピーディに対応する

 これらをコンテンツの視点から捉えると、デジタルの世界観で求められるコンテンツの役割が見えてくる。

 顧客目線からの価値定義については、機能的価値だけでは生活者にとってエンゲージや購買行動のトリガーにならず、情緒的価値へ転換が必要であることは、デジタルを活用したマーケティングが生まれ、インタラクティブに至る中で欧米を中心に常に言われてきたことだ。

 ジョンソン&ジョンソンのグローバルマーケティンググループ担当元副社長のKim Kadlec氏はこう言う。

「伝統的な広告は、コンテンツの邪魔をしてきました。現在の環境において考え、問いかけるべきは『あなた自身がいかにコンテンツの一部になれるか? 消費者の日々の生活の中にどうやって入り込み、消費者の経験を損ねるのではなく、より価値あるものにすることができるか?』である」

 一方で、日本企業によるコンテンツは、機能による差別化が困難な製品やサービスであっても、機能的価値による無理な差別化の試みが大半を占めているのが実態だ。だが消費者が求めているのは、新たな発見を「情緒的に」体験できるメッセージである。つまり、コンテンツには、機能的価値から情緒的価値への転換が求められているのではないだろうか。

 消費者の興味を醸成するコンテンツを出し続けることは、情報量の増大に伴い、ますます重要性を増している。一人の消費者の得る情報量は、過去と比較して数百倍となった(詳細は記事の末尾を参照)。さらには今日、YouTubeなどによって個人がメディア化し、多くのコンテンツがあふれる勢いで生成されている。結果として、消費者側に情報の選択権は移り、興味を醸成するコンテンツ以外は捨てられる情報にならざるを得ない。

 また、情報過多時代であるがゆえ、企業は消費者に対して興味が薄れないうちに反応できるようにリアクションの高度化が求められる。かつ、消費者が多くの情報により忘却していくことも考慮しなければならない。人間そのもののキャパシティは変化していないと考えれば、情報量が多いことより忘却が早くなるのは当然のことである。よって来訪した消費者を確実に育成するという意味においても、彼らにとって自分事であり興味関心があるコンテンツが望まれており、忘却を考慮したスピードを持ったリアクションが必要なのである。

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