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デジタル時代のゲーム・チェンジャーになるために(1)

インダストリアル・インターネット・オブ・シングスで“成長”の定義を塗り替える

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インダストリアル・インターネット・オブ・シングス(IIoT)を成長に結びつけるためには、各国はまず自国の「吸収能力(National Absorptive Capacity、以下NAC)」を正しく見極めたうえで、それが自国の成長にどのような影響を及ぼすかを把握しなければならない。アクセンチュアは20カ国を対象とした分析を行い、各国の吸収能力(NAC)を算出。さらに経済モデルを用いて、IIoTによるGDP(国内総生産)の伸びを推定した。その結果、2030年までに合計で10.6兆米ドルという大きなGDP成長が見込まれることが明らかになった。

10兆米ドル規模の機会を活かすには

  はたしてインダストリアル・インターネット・オブ・シングス(IIoT)は、デジタル化が進むグローバル経済において成長の原動力となり得るでしょうか?

  この問いに、多くの国が「イエス」と答えています。たとえば、英国政府はこの「新たな産業革命」を牽引するスタンスを明確にしており、IIoT分野のリサーチに約1億2,500万米ドルを投じています1。中国政府はIIoTを「新たな戦略的産業」ととらえ、2015 年までにおよそ8億米ドルを投資する計画です2。またドイツは「インダストリー4.0(第4次産業革命)」を提唱し、IIoTテクノロジーを活用して国内製造業の生産性を30%改善することを目指しています3。これらの3カ国を含む多くの政府が、IIoTを国の競争力強化ならびに経済成長の有効な手段と見なしているのです。

  これには相応の根拠もあります。アクセンチュアの試算によると、IIoTは2030年までに数兆米ドルのGDP成長をグローバル経済にもたらすと見込まれます。それだけではありません。今回、30 カ国・1,400人の経営幹部を対象にアクセンチュアが実施した調査では、経営幹部の87%がIIoTは長期的な雇用拡大に寄与すると回答しています(詳細は別レポート「グローバルCEO調査2015 Industrial Internet of Thingsを価値創造につなげる」をご覧ください)。

  なぜ、ここまで楽観視できるのでしょうか? それはIIoTが生産性を向上させ、新たな市場の誕生を後押しし、イノベーションを加速させる可能性を秘めているからです。アクセンチュアがIIoTについて世界の経営幹部を対象に行った調査でも、IIoTは自社に多くのメリットをもたらすとの意見が多数を占めました。事実、調査に参加した経営幹部の約3分の2は、IIoTは新興国に先進国を追い越す力を与えると考えています。また回答者の63%は、IIoTは新興国と先進国の企業間に存在する、競争力のギャップをなくすだろうと回答しました。

  IIoTは大規模な経済的メリットをもたらします。しかし、このメリットを享受できるのはIIoTから最大限の価値を引き出すための環境が整備されている国だけです。各国が抱える課題を明らかにするために、アクセンチュアは英フロンティア・エコノミクスと共同で、先進国および新興国20カ国(世界の経済生産の4分の3を創出する国々)のGDPにIIoTが及ぼしうる影響をモデル化しました4。同モデルは計画中の投資水準のほか、各国の産業構造、および各国のIIoTテクノロジーの吸収能力を考慮しています。アクセンチュアの分析では、投資および政策面で現状を維持した場合、IIoTが今後15年間でこれらの20カ国のGDP累計額を約10.6兆米ドル押し上げるとの見通しが示されました。この条件下において、2030年にはIIoTがGDP成長率を1%押し上げる換算です。

  しかし、アクセンチュアの分析ではより大きな成長の可能性があることも明らかになりました。IIoTテクノロジーの吸収能力を改善する追加措置を講じ、さらにIIoTへの投資を拡大することによって、前述の20カ国のGDPは最大でプラス3.6兆米ドル、合計14.2兆米ドル増加する可能性があります。この場合、2030年には20カ国のGDP成長率がIIoTによって最大1.5%上積みされると推定されます。
ただし、この試算を現実のものとするには多大な労力を要します。国家経済の視点から見れば、政府首脳と政策責任者がIIoTを全面的に支援しないことには、技術革新を経済成長へと転換させることは不可能でしょう。

出典

1. 2014年1月1日にドイツ・ハノーバーで開催されたCeBITにおけるキャメロン英首相によるスピーチ。

2. Voight, Kevin, China looks to lead the Internet of Things, CNN, December 3, 2012.

3. Deutsche Bank Research, Industry 4.0: Huge potential for value creation waiting to be tapped, May 23, 2014.

4. 以下の20カ国:オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、インド、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国。

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