フェイスブックは業務を自動化して
社員を「過去の仕事」から解放した

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――人間の仕事を補って力を発揮させ、より面白い仕事をしてもらおう、という考え方が自動化戦略の核となっているようですね。

 なぜ自動化がこれほど重要かというと、社員が退屈な仕事から解放され、未来のことを考えて行動できるようになるからです。今日、世界のテクノロジー企業のほとんどは、最高の人材を獲得する競争に膨大な時間を費やしています。優秀な技術者にとっては、面白い課題に取り組める魅力的な会社がいくらでもあるわけです。苦労して採用し、教育して環境に慣れてもらった技術者を手放したくありません。自社に愛着を持って、自社で成長しキャリアを積んでもらい、ずっと長いスパンで自社と共に歩んでもらいたいはずです。

 それを実現する良い方法の1つは、彼らをぬるま湯につからせないことだと思います。退屈な仕事だけを長い間やっていると、社員は何も学ばず、それでもその仕事に多くの時間を費やさなければなりません。それが燃え尽きや不満につながり、彼らは去ってしまうのです。ですから、会社の成長が優秀な技術者のやる気にかかっている場合に必要なのは、システムの自動化や再設計を続けて、人の仕事が退屈・単調・繰り返しにならないようにすることです。自動化は人材の獲得と定着に役立つのです。

――技術やオペレーション担当のリーダーは通常、効率にばかり関心があり、社員の幸福を高めることにはそれほど興味がありません。

 それに加えて、多くの会社はオペレーションにまつわる組織構造に囚われすぎています。「君たちはこのチームで、この仕事をしていい。でも別のこの仕事についてやりたければ、他のチームに行ってくれ」というわけです。優秀な人材を雇い、その業務に支障を来すような従来の組織の壁を取り払う。これが会社のやるべきことだと思います。社員が本当に優秀なら、彼らは会社のために最善となることをしてくれるという前提で物事を進められるのです。チームを編成し、目標を与えて、あとは好きに働いてもらえばいい。

 さもないと、あるチームは目標を達成するために常に変化を求め、別のチームは安定とコスト効率ばかりを求めるような状況が生まれます。この2つのチームは水と油です。これでは何十、何百という社員たちが常に対立し合うことになりますね。これは非常にありがちな組織構造です。このチームは製品を担当し、こちらはミドルウェア、あちらはバックエンド。そしてオペレーションのチームがあり、セキュリティがあり、ITチームがあるというように。

 実はフェイスブックもそういう会社でした。私が入社した当時はそうした構造で、それはいたって理に適っていると思いました。私が以前にいたアカマイでもニングでも(ともにITソリューション企業)そうでしたから。

――あなたがそれを変えたのですね。

 我々は、そのような縦割りの構造を破壊しなければならないと気づいたのです。そのためにオペレーションが非効率になっていましたからね。スピードが遅くなり、最善の意思決定ができていませんでした。本来は1年後を見据えて決断しなければならない時に、短期的なコストに基づいて決めるようなこともありました。また自動化については、いくつかの部署は「自分たちが直接責任を負うことではない」と考えて、まともに取り組みませんでした。自動化の問題は小さなチームに丸投げされたのですが、当社の大量の技術者たちの仕事にはとても対応できない。我々はさまざまな壁を取り払うために、会社全体の組織構造を再検討し、採用する人材のタイプも見直す必要があったのです。

――現在は、イノベーションを担当するチームと基幹事業のチームを分けていますか。

 いえ。我々はチームごとに「大きな賭け」と呼ぶ目標を設定し、開発に1~3年かかる技術に投資する計画を立てます。たとえば、当社のサイトのフロントエンドを動かす新しいコンパイラは完成までに数年かかりましたが、その研究開発に取り組んだチームは、フェイスブックを動かしているランタイムの管理という仕事も並行していました。あるチームが専任で新しいことに取り組み、他のチームは従来の仕事しかやらない、という状況ではありませんでした。

――マネジメントの専門家のほとんどは、イノベーションを軌道に乗せるには専任チームを別途つくれ、と言います。そうせずに1つのチームが両方をやり繰りするのは、大変ではないでしょうか。

 大変です。長期的な目標から気をそらすような邪魔が、毎日のように入ってきますからね。だから、最適なチームをつくるよう万全を期す必要があります。求められるスキルセットと多様性があるチームです。また、締め切りを多少柔軟にして、割り込み仕事が思うように片付かない時のために余裕を持たせる必要もあります。

 しかし一方で、1つのチームによるイノベーションと既存業務の並行にはとても多くの利点があります。まず何より、物事がはるかにオープンになります。あるチームが安全な秘密の場所で、何かとてつもなく革新的なことに取り組んでいる。それがやがて既存の仕事を奪うもしれない。こんなふうに思わせる状況を好む人はいません。

 これは両者にとって都合が悪いのです。イノベーションチームはこう悩みます。「まだ何の成果も上げていない。会社は自分たちを片隅に追いやって、何かすごいものをつくれと言う」。かたや、トラブルや顧客サポート、緊急事態などに対処せねばならない基幹事業チームは、こう不満を抱くことになります。「いつになったらもっと革新的な仕事に取り組めるのか。私たちは二流社員ということか」とね。

――透明性の重視は、いかにもフェイスブックらしいですね。

 当社のような若いテクノロジー企業は、より開放的な文化を持っています。秘密裏に行われることはほとんどありません。マーク・ザッカーバーグは常に、透明性が高くコミュニケーションの活発なチームと環境を持つ会社を目指してきました。たとえば毎週金曜日、彼は全社員を相手にしたQ&Aセッションを行い、厳しい質問をするように促します。この会社はオープンであり1つのチームである、ということを強調しているのです。もちろんそれは、「世界のすべての人々をつなぐ」という会社の使命とも一致しています。この使命は常に一貫しており、強く意識されています。当社のオペレーションにおける言動は、その使命の実現に向けて、すべてが一致していなければならないのです。


HBR.ORG原文:An Inside Look at Facebook’s Approach to Automation and Human Work June 12, 2015

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ジュリア・カービー(Julia Kirby)
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