「ぼんやり」する時間をつくることで
仕事の生産性が上がる

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モバイル機器による「常時オンライン」の状態は、生産性を高める一方で阻害することにもなるという。「ぼうっとする時間」が失われ、脳の有益な働きが抑制されるためだ。そのメカニズムと対策を示す。

 

 スマートフォン、タブレット、ラップトップ、その他のデバイスのおかげで、技術上の理由で仕事に取りかかれない時間帯は存在しなくなった。したがって理論上は、以前よりも仕事がはかどるはずだ。すべての時間を仕事に使えて、効率を最大化できるから、である。

 デバイスの存在が、ある部分では生産性を高めてくれるのは明らかである。その一方で、生産性を阻害する由々しき側面についてはあまり知られていない。それは、ぼんやりと思考をさまよわせている状態(mind-wondering)、いわゆる白昼夢を妨げてしまうことだ。退屈な時や仕事の途中で休憩を取る時に、常にデバイスに向かっていると、新しい情報を処理し続けている状態になる。この「常時オン」の状態でいると、ぼうっとしている時に生じる脳内のプロセスが阻害される。それによって生産性が落ちてしまう場合があるのだ。

 神経科学と心理学の研究によれば、ぼんやりすることは創造性や計画性を促進し、将来の見返りを得るために目先の欲望を抑える能力をも高める。いずれも、仕事で成果を上げるために重要なものだ。これほど幅広い効果を得られる行為はそう多くない。

『サイコロジカル・サイエンス』誌に掲載された研究によると、ぼんやりしている時には、研究者が「創造的培養(creative incubation)」と呼ぶ現象が起きているという(英語論文)。問題に直面して新しいアイデアを必要としている時、いったん思考をさまよわせてから問題に戻ると、よい解決策を思いつく可能性が高まるのだ。何か別のことに意識を向けていても、脳は無意識下でその問題に関する処理を続行している。そのため大量の新情報を追跡していると、その無意識下の働きが妨げられて思考のさまよいが抑制され、創造的な解決策を「培養」する時間がなくなってしまうのである。

 ぼんやりすることは、計画的に仕事を進めるうえでも重要である。リエージュ大学のデイビッド・スタワーシクらの研究によれば、ぼんやりしている時に脳が無意識下で取り組んでいるのは、主に将来の計画を立てる作業だという(英語論文)。

 たとえば、ある人が新規クライアントの獲得に奮闘しているとする。電話勧誘や提案書の作成といった日々の作業に追われていると、持続的なクライアント獲得の仕組みを築くための計画策定がおろそかになりやすい。そしてしばしば、そんな長期的なことを考えるには時間が足りない、とぼやくことになる。しかしここで見過ごされているのは、時間の確保という問題だけではない。途切れることなく仕事に集中し続けるせいで、将来への計画性を促進する脳内のプロセスが阻害されているかもしれないのだ。

 ドイツの脳科学者らの研究も、別の効果を示している。目先の欲望に屈せず、より望ましい将来の成果に向けて自制する能力は常に問われるが、思考のさまよいはそれを助けるという(英語論文)。

 たとえば、新規クライアントの獲得に数ヵ月間取り組んだ結果、契約のオファーをもらえたものの、提示金額が低かったとしよう。これまでに費やしてきた労力を考えれば、わずかでも成果を得られるのならオファーに飛びつきたくなる。だがその場合、これまでの努力に本当に見合う成果を上げるための、さらなる交渉を続けることができなくなる。思考をさまよわせている時は、長期的な目標が脳裏に浮かび、そうした状況を打開する新たなアプローチがひらめくのだ。

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