部下への「思いやり」は「叱責」に勝る

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失敗やお粗末な仕事ぶりを見せた部下に、上司はどんな態度で接すべきか。「怒り、叱責、懲罰」よりも「思いやり、共感」を持って対応するほうが効果的であることを、実に多くの研究が示している。

 

 スタンフォード大学の脳神経外科医ジェームズ・ドーティ博士は、ある少年に脳腫瘍の手術を施した時のことを語っている。術中にアシスタントの研修医が、不注意で血管に穴を開けてしまった。そこら中に血があふれ出し、術部が見えない。少年の命に関わる事態である。選択肢はただ1つ、傷ついた血管を手探りで探し当て止血すること。ドーティは運良くそれに成功した。

 私たちのほとんどは脳外科医ではないが、部下の大きなミスによって、重要なプロジェクトが台無しになりかねないような状況に直面することは当然ある。そこで問題となるのは、部下が良い働きをしていない時、あるいは過ちを犯した時に上司はどう対応すべきかということだ。

 もちろん、部下への不満が生じるのは誰にとっても自然なことだろう。ミスが重要なプロジェクトに悪影響を及ぼすものだったり、自分たちのイメージを損なうものだったりする場合は特にそうだ。

 ミスをした部下に対する従来の対処法は、何らかの方法で叱責することである。何らかの罰によって教訓を与えることが本人のためになる、というのがその意図だ。叱責によって不満を表明すれば、上司自身のストレスや怒りが和らぐという効果もある。さらに、叱責は他のチームメンバーの気を引き締めることにもなり、今後の失敗を避けることにつながるという意義もあるのだろう。

 しかし、パフォーマンスの思わしくない部下に対して、別の方法で対応する上司もいる。思いやりと関心を用いるのだ。そうしたマネジャーが不満や苛立ちを覚えていないというわけではない。部下のミスが自分にどう跳ね返ってくるか気を揉んでいるかもしれない。にもかかわらず、彼らは即断を避ける術を心得ており、さらにはミスをコーチングの機会に転じることもできる。

 最善の方法は何か。さまざまな研究では実は、思いやりを持って対応するほうがより好ましい結果となることが示されている。

 思いやりと関心は、従業員の忠誠心と信頼を高める。イギリスで2000人の従業員を対象に行われたある研究によれば、給料よりも職場での温かさやポジティブな人間関係のほうが、忠誠心に大きく影響していた(英語記事)。ニューヨーク大学のジョナサン・ハイトらの研究によれば、部下が上司を尊敬しその思いやりに心を動かされていると(ハイトが「高揚(elevation)」と呼ぶ状態にある時)、それだけ上司への忠誠心が高くなるという(英語論文)。あなたが部下に思いやりを持って接することで、相手の忠誠心が高まるだけでなく、その振る舞いを目にした他の人々も「高揚」を体験し、あなたに対してより献身的になる可能性がある。

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