「善人か悪人か」は置かれた環境で決まる?

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かの有名な「スタンフォード監獄実験」の考案者が30年を経て、その全貌を明らかにした。書籍『ルシファー・エフェクト』は、実験の詳細を紹介するのみならず、人間はいかに状況の力に左右される生き物であるかを如実に示した。

 

スタンフォード監獄実験の全貌

「スタンフォード監獄実験」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。1971年にスタンフォード大学で実施された社会心理学の実験です。これが歴史に刻まれるようになったのは、実験のあり方の是非と、実験から得られた知見が議論になったからです。

 この実験では架空の刑務所を大学構内につくり、被験者をアルバイトで雇います。彼らを看守役と囚人役にそれぞれ分け、2週間缶詰にして、役割を与えられた学生がどのような心理的変化をするかを検証するものでした。

 実験は大がかりで、実験の初日には地元の警察に依頼し、囚人役の学生を自宅で逮捕してもらい、そのまま架空の刑務所に連行するという演出までします。被験者に「これは実験ではなく、現実である」と錯覚させるためです。

 ところが実験は考案者の想定外の出来事が続き、わずか5日目で中止となりました。理由は、役割として看守を演じていた学生が、あまりに残忍な行為を繰り返し、囚人役の学生に甚大な被害を及ぼす可能性が出てきたからです。

 以来「スタンフォード監獄実験」という言葉は、人が置かれた環境によって、いかに変化するものかを表す代名詞のように使われるようになりました。

 先月、この実験の考案者であるフィリップ・ジンバルドー氏がこの実験の全貌を明かした著作を出版しました。書名は『ルシファー・エフェクト』。普通の書籍より一回り大きいA5版で頁は800を超える大著です。米国で出版されたのは2007年。ジンバルドー自身も、この実験を総括して振り変えるのに30年以上要しました。

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