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IoTで「ものづくり」の現場に第4の産業革命が到来! 日本の製造業は生き残れるのか

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ドイツ発の「インダストリー4.0(第4次産業革命)」に象徴されるように、「ものづくり」の現場にもIoT(Internet of Things)の波が押し寄せている。法政大学デザイン工学部システムデザイン学科で教鞭をとり、2015年に発足した「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)」の理事長を務める西岡靖之教授に「ものづくり」におけるIoTの本質とインパクトは何か、そしてIoT時代に日本の製造業が取り残されないための指針を伺った。

IoTでビジネスプレーヤーは総入れ替え

――ドイツでは、IoTを利用した「インダストリー4.0(第4次産業革命)」に国を挙げて取り組んでいると言います。IoTは、「産業革命」というほどのインパクトを世の中に与えるのでしょうか。

 ドイツの「インダストリー4.0」の本質は、製造業の生産工程を自動化するFA(Factory Automation)にあるとするならば、それは革命というほどのものなのか、そして「IoT」はITの真ん中に「o」が入っただけのバズワードではないかと、私は当初気に掛けていませんでした。
 しかし現在、IoTにはビジネスプレーヤーが総入れ替えになるくらいのインパクトがあると考えるようになりました。それはIoTが実現する未来を想像し、その本質を徐々に認識するようになったからです。

西岡 靖之(にしおか・やすゆき)
法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授
1985年、早稲田大学理工学部機械工学科卒業。国内のソフトウェアベンチャー企業でSEを経験し、1996年に東京大学大学院博士課程修了。同年、東京 理科大学理工学部経営工学科助手。1999年、法政大学工学部経営工学専任講師。2007年から現職。ものづくりに関する情報マネジメントシステムの標準 モデルを研究。インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)理事長も務める。

  IoTは「モノのインターネット」を指すと言いますが、その本質は、「モノ」をつなぐというより、正確には「コト(Things)」をつなぐものだと、私は理解しています。現在、消費の対象は「モノ」から「コト」へと移ってきているとよく言われます。人々が欲しているのは「モノ」そのものではなく、モノによって体験できる「コト」、つまりサービスです。そして、よく見ると、工場の中はこうした「コト」であふれています。

   IoTで「コト」を空間の制約を超えてつなぐことによって、消費者がほしいサービスをどこでも受けられるようになる。同時に、これまで工場の内部にあった「コト」が、新たなサービスとして、時間や空間の制約を超えて展開します。これがIoTの持つ可能性を理解するうえで重要なポイントです。

  消費者がサービスを受けるためのネットワークを社会にはりめぐらせるという意味で、IoTは必須のインフラになるでしょう。さらに、その際、「コト」をつなぐ手段はインターネットに限らず、セキュアなネットワークであればよいと私は考えています。

  IoTで「コト」がどこでも消費できるようになれば、「モノ」自体の価値は相対的に下がる可能性があります。たとえば、自動車という「モノ」が欲しいというよりも、それによって安全にドライブを楽しみたい、遠くに行きたいという「コト」に価値の比重が移るとします。その場合、消費者は自動車を買う必要はなく、カーシェアリング・サービスを使用すれば、十分に事足りるわけです。つまり、自動車はサービスのなかの一つの「部品」に過ぎなくなるということです。

 どこからでもサービスへアクセスできる世界では、ユーザーにとっての価値を最終的に提供する会社が、より利益を得ることになります。たとえば現在でも、アップルのハードウェアを製造しているのは外部の製造会社ですが、ソフトウェアやコンテンツ、それにつながる仕組みといった一連のバリューチェーンをアップルが統括してユーザーにその価値を提供することで、同社が大きな利益を得ています。工場の投資コストは製造会社が持つにもかかわらずです。こういった、消費者にサービスを提供して品質を保証する企業が大きな利益を得る傾向は今後ますます加速するはずです。

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