「運命を決めるのはテクノロジーではない、私たちだ」
――書評『ザ・セカンド・マシン・エイジ』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する新連載。第12回は、『機械との競争』の著者であり、MITスローンスクールのエリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーによる『ザ・セカンド・マシン・エイジ』を紹介する。
 

コンピュータが人間の知的能力の限界を超える時代

 昨今、人工知能(AI)を巡る議論が熱心に繰り広げられており、書籍や雑誌、コミック、映画でもAIをテーマにした作品を目にする機会も多い。グーグルのエリック・シュミット氏のように実用化に積極的な人物がいる一方で、スティーヴン・ホーキング博士や起業家のイーロン・マスク氏のように警鐘を鳴らす者もおり、新しいテクノロジーに対する捉え方はさまざまである。

『ザ・セカンド・マシン・エイジ』の筆者であるエリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーは、『機械との競争』でも注目を浴びた人物である。前作では、機械化によって我々の社会にいかなる変化が生じるのかについて、わかりやすくコンセプト重視の主張がなされた。一方の今作は、膨大なデータと事例研究をもとに、より現実的な議論が展開されている。

 本書では、18世紀後半の産業革命を「ファースト・マシン・エイジ」と定義している。この時代を牽引したのは蒸気機関である。産業革命を機に、ヒトと家畜だけでは不可能であった大量生産と大量輸送が実現される。その結果、それまでほぼ横ばいだった生産性が急激な向上を遂げており、筆者らはこれを「このとき初めて人類の進歩を牽引する主役が技術の力になった」と評している。

 そしていま、我々は「セカンド・マシン・エイジ」を迎えている。テクノロジーの発達によりコンピュータが人間の知的能力の限界を超越し、「蒸気機関が肉体労働において実現したことを、知的労働で実現する」時代である。現時点では、この変化が何をもたらすのかはっきりしないことを筆者らも認めているが、さらなる生産性の向上が実現することだけは間違いはずだ。

 以前、オックスフォード大学が今後10年で消える仕事を発表して大きな話題を呼んだが、筆者らも「『ふつう』の仕事はなくなる」と指摘するように、機械化の進行は我々の労働環境にも大きな変化をもたらすのであろう。ただ、AIの議論が雇用問題のみに限定されることには若干の違和感を覚える。

 なぜ、そうした議論が生まれるのか。そこに至る技術的背景はもちろん、社会的な背景までを理解することによって、より冷静かつ有意義な議論が生まれるのではないか。そのためにも、本書は読むべき一冊である。

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