日本特有の「経営の常識」はいつ生まれたのか

日本的経営と日本企業の進化【第1回】

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早稲田大学ビジネススクールの教授陣がおくる人気連載「早稲田大学ビジネススクール経営講座」。15人目にご登場頂くのは経営戦略、総合経営がご専門の相葉宏二教授だ。「日本的経営と日本企業の進化」をテーマに、全3回でお届けする。

日本的経営の本質

 日本企業が世界に冠たる優秀な経営システムをもつと言われ、現に世界で大活躍した1980年代は何だったのだろうか。20世紀が終わり相当経った今も、「失われた20年」と言われる。日本企業は今後どう変わるべきなのだろうか。変わる必要があるとしても、本当に変われるのだろうか。

 本稿では、今後の日本的経営の行方、日本企業の進化の方向性を3回に分けて考察する。第1回は日本的経営が必ずしも歴史的にみて、日本に必然的なものではないことを論ずる。

 筆者が、以前コンサルティングファームにいた頃、全世界のパートナー会議の金融部会でプロジェクトの経験をシェアするため、日本のある金融機関の全社戦略とそれに基づく人的資源配分に関するプレゼンテーションを行ったことがある。それはその企業が事業別の優先順位をつけて、優秀な人材をどの事業に配分しているのかを示すものであった。(図を参照)

 この企業では、戦略上重視している順に事業1や2に「A+、A」の優秀な人材を配分していた。問題はその企業の戦略の優先順位が、各事業が勝ち残れるかどうかという点とは逆だったことだ。事業1や2は花形分野ではあるが、この企業にとっては先端的で競争の厳しく勝ち目の薄い事業であった。一方、優位性が明確で収益に一番貢献するはずの事業4は、古臭い分野だとみなして、十分人材を配分していなかった。世界から集まった多くのパートナーはこの分析そのものに驚いた。

 くわえて、まったく理解されなかったのは、各事業部の人材を、第一選抜以下、例えばA+、A、B、C、Fといった「ランク分けするのはなぜか、それは可能なのか」という点である。彼ら・彼女らは、同じ人でも、優秀さは就く職種やレベルに応じて評価が変わるため、「人材の優秀さ」という「ゼネラリスト的な尺度」は考えられないという。

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