マーケティング活動とは
有権者や消費者を映す鏡である

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ジョン・ハワード首相(オーストラリア)が長期政権を築いた際の立役者であり、逆風にある幾多の候補者を当選に導いたのが、選挙ストラテジストのリントン・クロスビーである。その戦略から見えてくるものは、単に選挙に勝利する方法ではなく、ビジネスを成功に導くための定石である。最終回では、ロンドン市長選を総括したうえで、日本と英国を比較しながら、マーケティング戦略の本質を考察する。
 

開票結果を見守る開票日の夜

 ロンドン市長選の開票日は、投票日の翌日だった。

 出口調査による選挙速報はない。事前の接戦が予想されたロンドン市長選は、いずれの候補者が当選するにせよ、結果がわかるのは深夜になると見られていた。

結果発表直後のボリス(右)とリビングストン(左)

 候補者のボリス・ジョンソンと選挙ストラテジストのリントン・クロスビーを中心とする選挙対策本部の幹部数名は、選挙結果が発表される市庁舎近くで選挙結果を待っていた。その他の選挙対策本部の面々や保守党関係者は、保守党本部近くのタワービルの最上階にあるパーティ会場に集まっていた。皆、グラスを片手に複雑な気持ちで選挙結果が出るのを待っていた。

 多くの人がパーティ会場に集まる頃には、統一地方選全体としては、保守党が惨敗していることは明白だった。ロンドン議会選挙においても、保守党の現職副市長が議席を失った。ボリスの情勢が悪いのは誰の目にも明らかだった。

 ボリスがロンドン市長に再選されるかどうかはわからない。

 保守党としては、ここで一矢報いないことには、党全体のモメンタムに関わるという雰囲気があった。

 そんななか、キャメロン首相が午後10時過ぎにパーティ会場に現れる。だが、当初の予想を上回る接戦のためか、その時点でも結果が出ず、首相はいったん会場を後にした。

 日付が変わる直前、ようやく最後の地区の開票結果が発表された。そして、ボリスの再選が報じられた。

 しばらくすると、ボリスとキャメロン首相が会場に到着し、キャメロン首相は「ボリス・ジョンソンが保守党を救った」と評価した。ただし、パーティに参加していた若いキャンペーンスタッフたちは、早い時間からのパーティでほぼほぼ酔いつぶれていたのだが……。

 連載最終回となる今回はまず、選挙戦終盤の情勢を振り返る。そのうえで、キャンペーン戦略との関連からロンドン市長選挙の結果を分析し、日本と英国を比較しながら、マーケティング戦略が持つ本質について考えてみたい。

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