グーグル分社化の意図をブランド論から読み解く

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デイビッド・アーカーに並ぶブランド論の大家、ケビン・レーン・ケラーが、グーグルによる親会社アルファベット設立の意図を読み解く。カギは「ブランド・プロミスを果たす」ことの重要性だ。

 

 グーグルは世界で最も価値が高いブランドの1つだ。ブランドコンサルティング会社のインターブランドは、2014年のブランド価値ランキングでグーグルに1074億ドルという評価額を与えており、これより上位はアップルしかない。

 合理的に考える人ならば、こう疑問を抱くかもしれない。これほどよく知られたグーグルというブランドがありながら、なぜ同社はアルファベットという新たな親ブランドを立ち上げて、曖昧にしてしまうのか――。この問いを考えるうえで、別の2つの有力ブランドがたどった経緯が参考になる。スターバックスとヴァージンだ。

●スターバックス

 スターバックスが示すのは次の教訓だ。ブランド・プロミス(ブランドが約束する価値)の希薄化、そしてプランド・プロミスが妥当性を失うような分野への過度な拡張は、どんなブランドにとっても危険となる。

 2000年代に入る頃、それまで20年にわたって驚異的な成長を遂げてきたスターバックスは、自社をコーヒー製品・コーヒー体験という枠に縛られないブランドとして捉え始めた。つまり「ライフスタイル・ブランド」として、コーヒーという原点を超えて他のさまざまなカテゴリーに関わる姿勢を示すようになったのだ。より広い視点から市場での存在を拡張していき、たとえばオンラインでの家具販売を目指すスタートアップ企業に投資したりした。

 焦点のずれをウォール街に嫌われたスターバックスはある時、株価を1日で28%下げた。時価総額20億ドルの損失だ。金融アナリストの声に耳を傾けた同社は、原点に回帰してコーヒーという中核事業にもっと専念することにした。その甲斐あって、その後の不景気の最中でも価格プレミアムと利益率の維持に成功した。

 ところがである。2000年代のその後の数年で、同社はいくつかの決定を下していく。まず、挽きたての新鮮なコーヒーではなく袋詰めのコーヒーを導入。容器から新鮮な豆をすくって客の前で挽くことをやめてしまった。また、以前は店員が飲み物をつくる様子は客から見えていたが、その視線を遮蔽した。他にも行われた一連の施策が相まって、客がこれまでスターバックスとそのバリスタから得ていた個人的体験は著しく損なわれた。最も豊かな感覚的体験を提供する、という同社のブランド・プロミスが果たされなくなり、不満を覚えた客が離れ、必然的に売上げは落ち込んだ。

 ここで再び、スターバックスは原点回帰を図り、いくつもの改革を実行する。新型コーヒーマシンの導入、コーヒー関連グッズの店頭販売の再開、挽きたてコーヒーの復活、新たなブレンド(パイクプレイスとブロンド)の投入などだ。そして広く知られているように、2008年2月には全米7100の全店舗を3時間閉店し、バリスタの再教育を実施。「私たちはかつて持っていた焦点を失っていました。それはお客様です」と、創業者ハワード・シュルツは述べた。

 スターバックスはこれら一連の経験を通して、集中を徹底し続けること、そしてブランド・プロミスを果たすことの重要性を知ったのである。

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