瞬時にメッセージを印象づけるために、
キーワードを抽出して繰り返し使う

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ジョン・ハワード首相(オーストラリア)が長期政権を築いた際の立役者であり、逆風にある幾多の候補者を当選に導いたのが、選挙ストラテジストのリントン・クロスビーである。その戦略から見えてくるものは、単に選挙に勝利する方法ではなく、ビジネスを成功に導くための定石である。第4回は、実際の選挙メッセージがいかに作成されたのかを解説し、メッセージを有権者に効果的に届けるためにキーワードを抽出し、それを繰り返し使う重要性が語られる。
 

動画「ケン vs. ケン」で
対立候補の信用性を問う

 リビングストンが公共交通運賃の7%カットを打ち出して以来、ボリスの選挙対策本部では、それがいかに財源の裏付けのないものであるかを示すために、さまざまなコンテンツを作成していた。前回紹介したビラもその一つである。

 その活動の一環として、ボランティアスタッフの一人が「ケン(・リビングストン)vs. ケン」という動画を作成した。

 動画では、2012年のロンドン市長選挙の候補者としてのリビングストンと、2000年から2008年までロンドン市長であったリビングストンの発言を対比して、いかに矛盾しているかが示されていた。過去の発言については、ロンドン市議会におけるリビングストンの実際の発言を入れているために、非常に説得力があった。

 たとえば、候補者のリビングストンが、「投資とは別にプールされた剰余金がある」と言えば、市長のリビングストンが、「運賃を値下げしたいのであれば、何がその財源として削減されるのかを示さなければならない。すべての剰余金は今後の投資プロジェクトに割り当てられている」と反論する。さらに、「ロンドン交通局には過剰な利益がある」と言えば、「我々は利益を出すことが許されていない」と言う、といった具合だ。

 動画の最後には、「ケンとケンの戦いのなかで、ロンドン市民がその被害者となる」に続けて、「ケンを信用することはできない」[1]という、リビングストンに対するネガティブキャンペーンのトップメッセージが強調された。

 今回は、実際の選挙戦でボリス陣営がどのような「メッセージ」を設定したのか検証したい。

 まず、ポジティブとネガティブそれぞれのキャンペーンで定義されたターゲット有権者を振り返り、実際のメッセージを紹介する。そして、そのメッセージがいかに「良いメッセージ」の4条件を満たしているかを示す。なお、条件4については要件を満たしているかの判断が難しいため、詳細を深堀って分析する。

 そのうえで、このようなメッセージ設定に基づき、実際のキャンペーンであらゆる媒体で使われることとなるキーワードとして、どのようなものが抽出されたのかを紹介して、締めくくることにする。

[1] You just can’t trust Ken.
 
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